Research Abstract |
【内容】 魚卵アレルギーの研究では,アレルゲンの構造解析と同時に,交差魚種の網羅的解析が必要である。申請者らは昨年度までの研究において,シロザケβ'-cの2種類のIgE結合部位が,さまざまな魚類卵黄タンパク質間で相同性の高い領域に存在することを確認した。また,各種のデータベース検索において,魚肉成分や魚類以外の卵黄タンパク質中には,決定したIgE結合部位と相向性の高い部位は確認されなかったため,β'-cの交差性は魚卵間にのみ存在する可能性が高いと推測した。しかし一方では,魚卵と魚肉間における抗原交差性の存在を示唆する報告がなされている。そこで今年度は,抗β'-c抗体を用いたサンドイッチELISAを用いてシロザケの筋肉および内臓に含まれるβ'-c様成分を定量し,魚卵と魚肉間の抗原交差性に対する血中ビテロジェニンの関与について検討した。 【結果】 まず,性成熟したシロザケの筋肉および内臓(肝臓,腎臓)各1gから,雄で0~0.17μg(n=10),雌で0.17~1,700μg(n=15)相当量のβ'-c様成分が検出された。また,抗β'-c抗体を用いたイムノブロッティングにより,雌の筋肉と内臓中には分子量が14k~90kの範囲に分布する複数のβ'-c様成分の存在が確認された。一方,雄サンプルでは,含有するβ'-c様成分量が少なく,明確な反応は確認されなかった。以上の結果より,検出されたβ'-c様成分はVgであると推測した。また,β'-cサブユニットの分子量は16-18kであることから,今回検出された成分の多くは,Vgがβ'-cへと開列する途上の成分,あるいは個体の死亡後に体内酵素による分解で生じた産物であると推測した。 本研究により,魚肉や内臓にもβ'-c様成分が存在し,それによって魚卵との抗原交差性様の挙動が見られることが示された。また,雄においてもβ'-c様成分が検出されたことは,いくらアレルギー患者は,魚体の雄雌を問わず,魚肉や内臓の摂取により,アレルギー症状を惹起する可能性があることを示唆している。
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