2010 Fiscal Year Annual Research Report
農業施策における競争型助成金の導入可能性と条件整備に関する研究
Project/Area Number |
21580270
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊庭 治彦 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (70303873)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 滋晃 京都大学, 大学院・農学研究科, 教授 (70169308)
|
Keywords | 戸別所得補償制度 / 全国一律条件交付型 / 農地・水・環境保全向上対策 / 激変緩和措置 / 制度変更 / 地域農業資源 / 混合福祉経済 / 変動費助成型 |
Research Abstract |
今年度は主には次の三つの研究活動を行い、それぞれに成果を得た。 第一に、日本の農業施策の中心となる戸別所得補償制度に関しての調査を行い、その成果を専門誌論文2編として公表した。一編は、小規模農業経営が同制度に加入する要因として「激変緩和措置」の機能に焦点を当て分析を行い、全国一律条件交付型と位置づけられる助成金の効果、限界、課題を明らかにした。もう一編は、同制度が集落営農に与える影響に関して、三つの視点((1)集落内農家の組織活動への参加の確保、(2)事業の採算性の確保、(3)これまで構築してきた地域営農体系の再編の必要性)から分析を行い、制度変更に直面しての集落営農の経営上の課題を明らかにした。 第二に、日本における農村社会の組織的な取り組みに対する一律的な補助施策である「農地・水・環境保全向上対策」に関しての調査・分析を行い、国際学会(米国・アトランタ)において発表を行った。その主な内容として、非農家住民による地域農業資源の維持のための協力を得るためには、それに見合った誘因を提供することの必要性を明らかにした。具体的には、これまで農業者組織のクラブ財であった地域農業資源を地域社会の公共財として位置づけ、地域住民による利活用を可能とすることが必要となる。 第三に、前年度に行った調査・分析から得た成果を学会誌論文2編として公表した。一編は、米国の小規模農場に関わる競争型助成金に関する研究成果であり、低額の予算と混合福祉経済社会という条件下においては、競争的助成金と優れた支援NPOの組み合わせにより小規模農場に対する支援が効果的かつ効率的に行われえることを明らかにした。もう一編は、新たな事業に取り組む上での助成金の非効率性と競争型助成金の効果に関する研究成果であり、初期投資助成型助成金の非効率化が進む分野においては、変動費助成型助成金へシフトすることと、変動費助成型助成金の適正な運用がはかれる制度設計が必要であることを結論とした。
|