Research Abstract |
魚類養殖において伝染病が多発し,大きな経済的損失を被っている。抗生物質の多用は薬剤耐性菌を出現させ,問題が大きい。これに対し,インネートイムニティー増強による魚類の感染防御能誘導は,ワクチンによる特異免疫とともに,感染症制圧のための有力な手段である。本研究では,Lactobacillus, SaccharomycesおよびPichiaを共棲発酵して得られた免疫賦活物質を魚類に投与し,耐性菌を出現させずに感染症を予防する方法の確立をめざしている。今回,有効な疾病対策がなく,大きな問題となっているトラフグの粘液胞子虫性「やせ病」に対する共棲発酵培養産物の予防効果を,野外実証実験により証明した。本年度は,1群2,000匹のトラフグをそれぞれ陸上海水水槽3基に収容して実験を行った。共棲発酵培養原液3%あるいは1%添加固形飼料を毎日,魚体重の1%ずつ経口投与した。4カ月投与後の体重増加率は,対照と比べ,共棲発酵培養産物投与群が有意に高かった。ただ,今回の試験においては観察期間中やせ病の発生は見られず,PCRによる粘液胞子虫遺伝子の検出も陰性であった。また,血液検査,肝機能検査の結果にも特に異常は観察されなかった。このため,現在継続して観察を続けている。共棲発酵に用いたそれぞれの微生物は単独で,in vitroでマウスリンパ球を活性化した。また,共棲発酵培養産物はフリーラジカル消去活性を示した。これらの結果から,共棲発酵培養産物投与は宿主の非特異的免疫(あるいはインネートイムニティー)を活性化させ,「やせ病」その他の感染症に対する抵抗性を上昇させる要因になりうると推測した。
|