2009 Fiscal Year Annual Research Report
電位依存性イオンチャネルにおける電位センサーとイオンゲートとの動作連関
Project/Area Number |
21590040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大澤 匡範 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 助教 (60361606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋田 一夫 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 教授 (70196476)
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Keywords | イオンチャネル / NMR / イオンゲート |
Research Abstract |
1.放線菌由来K^+チャネルKcsAのNMRシグナルの帰属 本研究では、pH依存的に開閉するK^+チャネルをKcsAのメチル基の直接NMR観測を行った。閉状態に対応するpH6.7、および開状態に対応するpH3.2、45℃の条件下にて測定したKcsAのメチルTROSYシグナルをpH6.7およびpH3.2で帰属した。開状態に対応するpH3.2においては、強弱2つのシグナルを与えるメチル基が観測され、この事実より、KcsAは開状態にて少なくとも2種以上の構造をとっていることが明らかとなった。これらのメチル基は膜貫通領域の細胞外側に集中しており、特に選択性フィルターに存在するV76において2つのシグナルの間の化学シフト差が最も大きかった。 2.開状態における構造平衡 開状態にて平衡にある2種の状態の実体を明らかとするため、酸性で活性化状態のみをとるE71A変異体、野生型よりも不活性化状態の割合が大きいY82A変異体のメチルTROSYスペクトルを野生型と比較した。まず野生型のスペクトルの温度依存性を調べた。pH3.2にて温度を45℃から5℃刻みで低下させたところ、45℃にて観測された弱いシグナルの強度は温度低下に伴って増大し、強いシグナルの強度は減少した。両者は30℃でほぼ一致し、25℃では逆転した。そこで、電気生理学解析が行われる条件に近い25℃にて、野生型とE71A変異体、Y82A変異体のシグナル強度を比較した。その結果、選択性フィルターに存在するV76のメチル基の2つのシグナルのうち^1H:-0.13ppm,^<13>C:17.7ppmに観測されるものの相対強度が、E71A変異体で1.0,野生型で0.31,Y82A変異体で0.17であり、それぞれの開口確率とよく一致した。これらの結果から、開状態で観測される2つのシグナルはそれぞれ活性化状態と不活性化状態由来のものと結論した。また、上記の温度依存性を利用して、pH3.2,K^+濃度120mMの条件下では45℃で活性化状態が、25℃で不活性化状態が選択的に観測されることが判明した。
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