2011 Fiscal Year Annual Research Report
レチノイドによる海産性巻貝類のインポセックス誘導機構
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21590143
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
西川 淳一 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (90218131)
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Keywords | レチノイン酸受容体 / レチノイド / 核内受容体 / インポセックス / イボニシ / 内分泌撹乱物質 |
Research Abstract |
レチノイン酸が、脊椎動物や脊索動物の胚発生初期の形態形成に重要な役割を果たしていることは古くから研究されているが、無脊椎動物におけるレチノイン酸の役割についてはよく分かっていない。脊椎動物において、レチノイン酸は核内受容体の一種であるレチノイン酸受容体(RAR)に結合し、活性化された受容体が標的遺伝子近傍に存在する応答配列に結合し、転写を活性化する。RARは、進化系統樹上、棘皮動物(ウニ等)以上の種には存在するが、節足動物(昆虫等)より下等な生物には見つかっておらず、その境界がどこにあるのか不明である。そこで本研究課題では、棘皮動物と節足動物の中間にあたる軟体動物のRAR遺伝子のクローニングを行い、脊索動物や脊椎動物の一次構造と比較しながら、RARの分子進化について検討した。 軟体動物に属する海産性巻貝類のイボニシより、RARに相同性が高い遺伝子の全コード領域をクローニングし、塩基配列を決定した。その結果、ヒトのRARβと比較するとDNA結合ドメインで94%、リガンド結合ドメインで64%のアミノ酸が一致していた。また、系統樹解析により、イボニシ由来のRAR相同遺伝子は脊索動物以上のRARと別のグループに分類されることが分かった。イボニシのRAR相同タンパク質において、レチノイン酸との結合に重要とされているアミノ酸は比較的よく保存されていたが、大腸菌で発現させた組換えタンパク質はレチノイン酸に結合しなかった。さらに、染色体上でのRAR相同遺伝子の構成を調べたとごろ、イントロンが存在しないことが明らかとなった。脊椎動物のRAR遺伝子は多数のイントロンで分断されているのと大きく異なり、RARの分子進化は脊椎動物と無脊椎動物で異なる経路を辿ってきていることが予想された。
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Research Products
(4 results)