2010 Fiscal Year Annual Research Report
多環芳香族炭化水素類の塩素置換体による健康影響リスク評価に関する研究
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21590147
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
西村 哲治 国立医薬品食品衛生研究所, 生活衛生化学部, 部長 (20156110)
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Keywords | 多環芳香族炭化水素類 / 塩素置換体 / 変異原性 / Ah受容体 / 発生期 / B[a]P |
Research Abstract |
DewhurstとKichenの方法でベンゾ[a]ピレン(B[a]P)の塩素置換体および臭素置換体を化学修飾合成し、分取液体クロマトグラフィー/質量分析計により分離精製した。標品は、NMRにより一塩素置換体(B[a]P-Cl)は96.7%、一臭素置換体(B[a]P-Br)は97.2%、二塩素置換体は94.6%の純度であった。NMRによる解析で、一塩素置換体は6位に塩素が置換し、一臭素置換体も6位に塩素が置換していることを明らかとした。二塩素置換体は6,11-位と6,13-位に塩素が置換した混合物として回収され、両物質を分離精製することはできなかった。これらの精製標品を用い、マウスES細胞の神経系分化過程への影響を調べた。B[a]P-ClとB[a]P-Brを約70%以上の生存率を示したそれぞれ21.2μMと22.4μMの濃度で暴露を行った結果、細胞および神経系分化に対して形態的に曝露の影響がないことを光学顕微鏡下で確認した。両物質を神経系分化誘導過程で曝露した結果、外胚葉の神経細胞特異的発現遺伝子マーカーとして選択したNestin、Musashi、NSE遺伝子の発現パターンが、抑制される傾向がみられた。特に、B[a]P-Clは、分化誘導開始後10日から14日までの神経マーカーのmRNA発現をB[a]PおよびB[a]P-Brと比べてより強く抑制する傾向が認められた。また,B[a]P-Clは、10日からAhR,CYP1A1,CYP1B1、MAPK(ERK2)遺伝子のmRNA発現誘導を、B[a]PおよびB[a]P-Brと比べて発現抑制が認められた。これらの結果から、B[a]P-Clは、B[a]PやB[a]P-Brよりも強く、神経系分化過程で特異的に発現する遺伝子やAhRシグナルやMAPKシグナル伝達経関連遺伝子の発現に影響を与え、神経発達に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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