2009 Fiscal Year Annual Research Report
癌幹細胞におけるp53誘導型細胞死耐性とその制御機構
Project/Area Number |
21590438
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
高橋 玲 Doshisha Women's College of Liberal Arts, 薬学部, 教授 (60144565)
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Keywords | 遺伝子 / バイオテクノロジー / 病理学 / 癌 / 細胞・組織 |
Research Abstract |
本研究では、ヒト乳癌細胞集団において、A:p53発現誘導による細胞死に感受性を示さない少数の細胞(p53誘導型細胞死耐性群)、B:細胞分化を示さず、すべての階層hierarchyを再構築できる少数の幹細胞(癌幹細胞群)の両方の性質で抽出された小細胞群を比較検討することによって、癌の再発のメカニズムを明らかにし、癌治療の新たな標的の特性を明らかにすることを目的としている。ヒト乳癌細胞集団において、p53発現誘導による細胞死に感受性を示さない少数の細胞(p53誘導型細胞死耐性群)の特徴を解析した。FACSによる解析では、p53誘導型細胞死耐性群にALDH-1の発現亢進が認められ、従来の乳癌幹細胞で報告されている結果と一致した。すなわち、p53誘導型細胞死耐性の細胞は乳癌幹細胞を含んでいると考えられた。この結果は、細胞の免疫染色結果でも確かめられた。興味深いことに、比較的大型で複雑な細胞構造を持つ細胞が多く含まれていることが、従来の癌幹細胞の特徴とは異なる。一方、抗がん剤のひとつであるエトポシド処理をした場合にも同様の結果が得られているが、ALDH-1やその他の癌幹細胞マーカーの発現パターンにはp53誘導型細胞死の場合との違いがあり、詳細に検討中である。これらの結果は、p53を経由する細胞死、およびp53を経由しない細胞死においてALDH-1が乳癌幹細胞のマーカーとして有用であることを示すのみならず、抗がん剤治療における効果判定の重要な指標であることが確かめられた。この知見は、今後予定しているマウスへの移植実験(in vivo)で比較対照することの出来る基礎的なデータとなった。
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