2011 Fiscal Year Annual Research Report
血漿内S19リボソームタンパク質の血液凝固に伴う単球走化能獲得機構と凝血処理機能
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21590441
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山本 哲郎 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (60112405)
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Keywords | リボソームタンパク質S19 / プロトロンビン / Glaドメイン / 血漿タンパク質 / ワーファリン / 血液凝固反応 / 凝固XIII因子 |
Research Abstract |
タンパク質合成装置リボソームの成分であるリボソームタンパク質S19(RP S19)が正常血漿中にも存在しており、凝血の過程で、活性化血小板の膜上で凝固XIIIa因子の作用で架橋多量体化され、単球/マクロファージによる凝血塊の貪食処理を起こさせることを22年度と23年度に明らかにした。RP S19の分子量が約1万6千と、腎臓の糸球体で濾過されてしまう大きさであることから、血漿中では他のタンパク質と複合体を形成している可能性が高いと考え、RP S19固定化カラムを用いて結合親和性を持つ血漿タンパク質を分離して、そのアミノ末端部のアミノ酸配列解析を行ったところ、プロトロンビンであった。そこで、抗RP S19抗体カラムを用いて血漿からRP S19を分離したところ、プロトロンビンが一緒に分離され、血漿中で両分子が複合体を形成していることが確認された。Ca^<2+>度を上昇させると複合体が解離したことから、複合体形成にかかわっているプロトロンビンの分子内部位はγカルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインであると想定した。そこで、同部のGla化が阻害されているワーファリン治療中の患者血漿中のRP S19を調べてみると、その濃度が正常者の20%以下にまで減少しており、複合体形成部位はGlaドメインであることが明らかとなった。Ca^<2+>が配位していない状態のGlaドメインは強く陰性に荷電していることから、RP S19の分子内結合部位は陽性荷電クラスターだと考えて、Lys23,24,27,29をAlaに変異させた組換え体を調製したところ、プロトロンビンとの結合能を失っていた。つまり、RP S19分子中のヘパリン結合部位が複合体形成部位と同定された。血液凝固の過程で、プロトロンビンは血小板膜上で活性化され、XIII因子をXIIIa因子に活性化することを考慮すると、RP S19は架橋化されるために最適な分子と複合体を形成していると言える。そして、この複合体形成により、尿中へのろ過が妨げられて、RP S19は血漿中に安定して存在できていると結論できる。
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