Research Abstract |
HDLの主要アポ蛋白であるapoAIの化学的修飾の種類とそれによる機能変化の関連を明らかにすることは病態解析の観点から極めて重要である.また,HDLのサブクラスに特有な機能の評価はHDLの質を評価する上で不可欠である.今回は,N-ホモシステイン化apoAI,apoAI-apoAIIヘテロダイマー,apoE結合HDLについて,HDLの抗粥状硬化作用の一つである抗酸化能を評価した.また,機能と構造の関連を明らかにするために,N-ホモシステイン化apoAIについてN-ホモシステイン化を受けているリシン残基の特定を試みた. apoAI-apoAIIヘテロダイマー形成を促進するmyeloperoxidaseでHDLを処理しても,抗酸化能に変化は見られなかった.しかし,蛋白質レベルでは,apoAI-apoAIIヘテロダイマー・リッチ分画の抗酸化能はapoAIモノマーに比べて低下していた.血中において脂質フリーで存在するアポ蛋白は微量であり,apoAI-apoAIIヘテロダイマー形成は抗酸化能に大きく作用しないと考えられた.一方,N-ホモシステイン化apoAIではN-ホモシステイン化されるリシン残基の数が多くなるにしたがって抗酸化能の低下が認められた.apoE結合HDLに関しては,apoEを含まない田)Lに比べて抗酸化能が低いことが示された.過酸化脂質を定量したところ,apoE結合HDLはapoEを含まないHDLに比べて,すでに多量の過酸化脂質を含んでいることが明らかになった.すなわち,apoE結合HDLは酸化に対してより感受性が高く,生体内においては強い抗酸化能を示すと考えられた.N-ホモシステイン化を受けているapoAI分子中のリシン残基を質量分析によって同定したところ,全21のリシン残基のうち59番目および140番目のリジン残基が主要なターゲットであることが確認された.しかし,1分子のapoAIに1分子のホモシステインが結合した場合も,ターゲットとなるリシン残基は特定の1残基ではなく,複数が同定された. いくつかのapoAIの修飾と抗酸化機能について明らかになった.今後,他の修飾との関連や,他の機能に及ぼす影響を検討し,apoAIの修飾と機能の関連を総合的に評価し,心血管疾患のリスク予見への有用性をさらに明確にすることが必要であり,今回はその基盤となるデータが得られた.
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