2009 Fiscal Year Annual Research Report
胚性幹細胞複製分子を用いた新たな肺癌診断マーカーの開発
Project/Area Number |
21590635
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
小林 大介 Sapporo Medical University, 医学部, 講師 (50295359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗林 景晶 札幌医科大学, 医学部, 講師 (50381257)
渡邉 直樹 札幌医科大学, 医学部, 教授 (10158644)
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Keywords | ES細胞 / 肺癌 / 診断マーカー |
Research Abstract |
本研究は、胚性幹細胞(ES細胞)の再生/自己複製に必須の分子群が、非再生性臓器である肺ではほとんど発現しない点に着目し、肺癌特異性の高い腫瘍マーカーを開発することを目的としている。本年度は、1)まず癌細胞の増殖や脱分化状態の維持における重要性を調べるため、ES細胞複製分子(NanogおよびSALL4)の機能解析を行った。Nanogの遺伝子発現は解析した肺癌細胞4種全てで確認され、siRNAを導入すると著しい増殖抑制がみられた。sALL4についてもsiRNAを用いてその機能を調べたところ、導入細胞はほとんど増殖せず、最終的に分裂能を失って大型化した。2)次に、臨床検体を用いて検討を行った。Nanogに関しては、肺癌組織における発現は非癌肺組織に比べ約5,000倍高まっていた。また、Nanog遺伝子の肺癌診断能をROC解析で調べたところ、感度80%、特異度90%であった。一方、胃、大腸および乳腺由来の癌組織と非癌組織との間には、肺癌ほどの差異はみられなかった。この結果は、当該正常組織における再生性の違いを反映しているものと、考えられた。3)臨床病理学的背景別にNanogの発現量を比較したところ、特に有意差のある項目はみられなかった。しかし、臨床病期別の陽性率(感度)はstage Iで77%、stage II-IVで78%と早期から高発現していた。4)SALL4についても同様の解析を行った。肺癌組織では非癌肺組織に比べ遺伝子発現が高まっており、感度は80%、特異度は93%と、Nanogと同様に高い診断能を発揮することが明らかになった。今後、臨床検体における解析を続けるとともに、その発現制御機構の解明も行い、肺癌診断マーカーとしての意義を確立したい。
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