2010 Fiscal Year Annual Research Report
胚性幹細胞複製分子を用いた新たな肺癌診断マーカーの開発
Project/Area Number |
21590635
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
小林 大介 札幌医科大学, 医学部, 講師 (50295359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗林 景晶 札幌医科大学, 医学部, 講師 (50381257)
渡邉 直樹 札幌医科大学, 医学部, 教授 (10158644)
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Keywords | ES細胞 / 肺癌 / 診断マーカー |
Research Abstract |
本研究は、胚性幹細胞(ES細胞)の再生/自己複製に必須の分子群が、非再生性臓器である肺ではほとんど発現しない点に着目し、肺癌特異性の高い腫瘍マーカーを開発することを目的としている。本年度は、1)昨年度に引き続き、SALL4の発現様式について症例を増やし検討した。その結果、昨年度検討したNanogの場合と同様に、SALL4m RNAの発現量は多くの肺癌組織で高まっており、非癌組織と比べた際の平均発現量は約50倍高かった。一方、上記の発現解析を乳癌検体でも行ったところ、癌組織で高値を示すものの、その程度は肺癌に比べ弱かった。肺癌におけるSALL4の発現量をROC解析した結果、感度85%、特異度93%と高い診断能を有することが明らかとなった。臨床病理学的背景因子別に発現量をみたところ、性別や組織型を含め特に影響を与える因子はなかった。しかし、臨床病期別の陽性率(感度)はstage Iで84%、stage II-IVで86%と早期から高発現していた。2)そこで、SALL4の発現意義を調べるため肺癌細胞にsiRNAを導入したところ、non-silencing control RNA導入細胞に比べ著しい増殖抑制がみられた。この詳細についてアポトーシスや細胞老化等を調べたところ、主にG1期とS期早期における細胞周期の停止であることが明らかとなった。以上の結果と、マウスES細胞においてSALL4がG1期からの細胞周期を始動させる主要な分子であるという知見から、ヒト細胞でもSALL4の発現上昇が癌化の過程で重要な役割を担っていることが示唆された。今後、臨床検体における解析を続けるとともに、発現制御機構の解明も行い、診断マーカーとしての意義を確立したい。
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