Research Abstract |
予定では病院・家畜飼育施設・人口密度などの地域的特性を考慮して,都市部と郊外の二つの地域に分けてそれぞれ1年目と2年目にサンプルを採取する予定であった.研究準備を進めていく段階において,1本の河川の上流から下流域に沿ってサンプルを採取し,周辺施設や人口密度などとの関連を探る方が,より意義があるとの考えに至り,2009年11月に多摩川の上流から下流にいたる10箇所で河川水サンプルを採取した. それぞれのサンプルを培養し合計162株の細菌を単離した.このうち,菌の種類と薬剤耐性,採取場所の3点が同一であったものを除き,最終的に144株の細菌を今後の分析対象とした.API StaphとAPI 20E(BIOMERIEUX社)による同定の結果,主な菌はAeromonas sp.,Klebsiella sp.,Staphylococcus sp.,Escherichia coli,Vibrio sp.で,それぞれ64,18,22,10,8検体であった.これらの菌以外のその他は22検体であった.目下,これらの菌よりGenomic DNAを抽出し,菌についてのより詳細な情報解析を実施しているところである.また,あわせてPlasmid DNAも抽出し,次年度は菌種間での耐性菌情報についても比較・検討し,環境要因による影響とあわせてデータを解析する予定である.このDNA解析については,当初の計画にはなかったが,前述のとおりサンプル採取方法を変更したことを踏まえ,新たな菌の採取よりも,その予算と時間をPlasmid DNAも含めた詳細なデータ解析にあてる方が意義深いと考え計画を一部変更した. 菌の採取地点における抗生剤濃度については,LC-MS/MSによる濃度測定を実施したが,上流域では,検出限界未満のものが多かった.下流域で濃度が測定できたのは,アモキシシリン,スルファメトキサゾール,トリメトプリムの3種類であった.これら濃度と薬剤耐性情報の関係についても今後,解析を進めていく.
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