2011 Fiscal Year Annual Research Report
医療IT化が医療システムの透明性・効率に及ぼす効果に関する実証的研究
Project/Area Number |
21590716
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
長谷川 友紀 東邦大学, 医学部, 教授 (10198723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 邦愛 東邦大学, 医学部, 講師 (50288023)
北澤 健文 東邦大学, 医学部, 助教 (30453848)
瀬戸 加奈子 東邦大学, 医学部, 助教 (50537363)
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Keywords | 医療・福祉 / 社会医学 / 医療情報学 / 電子カルテ |
Research Abstract |
本年度の研究は、患者調査・医療施設調査等を用いた分析を行うとともに、昨年度に行った電子カルテ・オーダーリングシステムを導入している全医療施設に対するアンケート調査の分析を行った。また、国内外関係機関における聞き取り調査も併せて行った。 官庁統計を用いた分析では、平成17年と20年データを用い、電子カルテの有無及び施設特性を示す変数及び施設ごとの医療の質・効率を示す変数を選択して、一般病床に入院した患者のデータを抽出した。症例数の多い15疾患を選択し、それぞれの疾患で最も症例の多い術式の手術を受けた患者に関して、入院施設の電子カルテ導入の有無で二群に分類した。この二群間に予後において差があるか検定をしたのち、一般病床の平均在院日数を効率性の代替変数と考え、カプランマイヤー曲線による在院日数の比較、Cox比例ハザードモデルを用いた電子カルテの効率への影響の分析、の二つの分析を行った。性、年齢、副傷病数(平成20年のみ)、施設の病床数を調整変数とした。平成17年データでは、カプランマイヤー曲線による在院日数の比較では8疾患、Cox比例ハザードモデルでは4疾患で二郡間に有意な差がみられたが、平成20年データではそれぞれ13疾患で有意な差がみられた。電子カルテの導入化は医療の標準化を進め、診療パスなどの作成によって効率化に寄与することが考えられる。平成20年度の統計を使った分析でより多くの疾患で有意差が出た背景には、電子カルテ導入から一定の時間が経過し、医療の標準化が院内に浸透した施設が増加してきたことが考えられるだろう。 この結果は、平成20年と平成22年に行ったアンケート調査でも裏付けられる。IT化の成果がただ技術を導入しただけでは必ずしも十分に発揮できず、時間をかけて病院システムの中に浸透していくことでより効果を表していくことが明らかになった。
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