2010 Fiscal Year Annual Research Report
TDP-43の神経細胞核における発現は筋萎縮性側索硬化症の臨床経過に関与する
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21591113
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
隅 寿恵 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30403059)
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症(ALS) / TAR DNA-binding protein of 43kDa (TDP-43) / 封入体 / 中心前回 / 核萎縮 / 核萎縮 / オリゴデンドロサイト |
Research Abstract |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は下位運動ニューロンと上位運動ニューロンが選択的に傷害され、3-4年で死に至る難病である。ALSはTDP-43 proteinopathyのひとつと考えられる一方で、遺伝子導入疾患モデル動物では、TAR binding protein 43 (TDP-43)の細胞質への分布変化と凝集そのものが神経変性の原因かどうかについて議論される。今回、我々は大脳一次運動野(中心前回)において、TDP-43陽性封入体を定量的に評価してその分布と神経変性との関係について解析し、封入体を有する細胞における核の形態とTDP-43の発現の関係について検討した。弧発性ALS 15症例の中心前回についてTDP-43に対する抗体(1:3000, Protein Tech Group)を用いて免疫染色し、髄鞘染色を合わせて施行した。2等分した皮質部分を皮質浅層、皮質深層とし、さらに皮質直下白質、深部白質を加えた4部位を解析対象としてデジタルカメラにて画像を取り込んだ。各部位10視野におけるTDP-43陽性封入体の数を神経細胞、グリア細胞に分けて計測した。グリア細胞封入体の面積を解析ソフトウェア(VH-H1A5, Keyence)を用いて計測した。皮質における神経細胞内封入体(NCI)はグリア細胞内封入体(GCI)よりも有意に少なく(p<0.05)、ほとんどが微小顆粒状であった。CCIは他の3部位よりも有意に多く皮質深層に分布し(p<0.05, Wilcoxon signed rank test)、封入体を多く認める症例ではGCIは全体に大型化していた。封入体有する細胞の核は、神経細胞では一部変形し萎縮していたが、グリア細胞では類円形で変形を認めず、封入体有するオリゴデンドロサイト周囲では明らかな脱随巣を認めなかった。神経細胞内と異なり、グリア細胞内ではTDP-43陽性封入体の形成による細胞毒性は低く、細胞内で封入体が大型化すると考えられた。ALSにおいて最も罹患されやすい部位の一つである中心前回の皮質深層において有意に多くのGCIが認められたことはGCIがALSの神経変性に深く関与することを示唆する。TDP-43の異常とALSの神経変性との関係を解析するにはグリア細胞の存在も検討に入れる必要があると考えられた。
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