2011 Fiscal Year Annual Research Report
TDP-43の神経細胞核における発現は筋萎縮性側索硬化症の臨床経過に関与する
Project/Area Number |
21591113
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
隅 寿恵 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30403059)
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症(ALS) / TDP-43 / 上位運動ニューロン / 軸索変性 / 変異SOD1遺伝子(G93A)トランスジェニックマウス / 核外への移行 |
Research Abstract |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は上位及び下位運動ニューロンが選択的に傷害され、3-4年で死に至る難病である。運動神経細胞におけるTDP-43の凝集と細胞内分布の変化がALSにおける神経変性に深く関与すると考えられているが、TDP-43の細胞内凝集が神経変性の直接的な原因となりうるのかについては議論が多い。今回我々は、弧発性ALS患者の一次運動野(上位運動ニューロン)における神経変性の程度と細胞質内に形成されるTDP-43陽性封入体を評価し、さらに延髄での錐体路変性との関係を病理学的、免疫組織学的に検討した。弧発性ALS(15例)の延髄パラフィン切片を用いてリン酸化ニューロフィラメントに対する免疫染色を施行し、さらに髄鞘を青く染めるLuxol Fast Blue (LFB)染色を重染色して、錐体路における神経変性を定性的に評価した。中心前回における大型の錐体細胞数は軽度から中等度低下し、TDP-43陽性のグリア細胞内封入体数は、ALSにおいて最も変性が強い部位のひとつである皮質深層において有意に多く認められたが、その数と錐体細胞数の減少や延髄錐体路の変性の程度とは明らかな相関を認めなかった。次に、ALSモデルとして汎用される変異SOD1遺伝子(G93A)トランスジェニックマウス終末期の脊髄パラフィン切片に対してTDP-43とリン酸化TDP-43に対する免疫染色(+LFB染色)を施行しコントロールマウスと比較検討した。コントロールでは細胞核がTDP-43に陽性となり、リン酸化TDP-43に対して陰性であった。G93Aマウス脊髄の灰白質では残存する神経細胞の胞体や突起や封入体がTDP-43陽性となり、白質では軸索変性の高度な外側を中心にTDP-43やリン酸化TDP-43、かつLFB陽性の構造物を多数認めた。ALSにおける神経変性は、TDP-43の細胞内凝集だけでなくTDP-43の核からの移行そのものが、病態に関与する可能性が示唆された。
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