Research Abstract |
平成21年度は,慢性甲状腺炎に伴う自己免疫性橋本脳症の臨床スペクトラムを明らかにすることを目的とし,国内外より多数例の橋本脳症の症例の集積と橋本脳症の診断マーカーである抗NAE抗体,臨床徴候・検査所見・画像情報の収集・解析を行った. (a)多数症例の臨床像と免疫学的背景の検討:平成21年度は,総数249件,学内15件,学外232件,海外2件の抗NAE抗体の解析を行い,解析数の累積総数は700件を超し,橋本脳症の詳細な臨床・免疫学的特徴を解析した.世界的にも最も橋本脳症の症例の情報が集積していると考えられる. (b)血清希釈法により自己抗体の力価も新たに検討し,臨床病型や治療との関連を検討した. (c)臨床スペクトラムの解析結果:多数症例の解析から,抗NAE抗体陽性脳症で頻度の高いものとして,(1)亜急性に発症,(2)意識障害,幻覚・妄想などの精神症状を呈する,(3)脳波の徐波化がみられる,(4)免疫療法に良好な反応性を有する,ことが特徴として判明した.また,自己抗体の力価の解析から急性脳症型では5120倍~20480倍の高力価群と,320倍~1280倍の低力価群が存在する傾向がみられた.さらに,失調型は急性脳症型と比較して有意に高力価である傾向が認められた(p<0.05). 以上の結果をもとに,症例を今後も集積することによって,新たな橋本脳症の臨床診断基準が設定され,早期診断・治療に結びつく.
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