2010 Fiscal Year Annual Research Report
FLT3分子の糖鎖修飾と細胞内局在に基づく標的阻害効果増強法の検討
Project/Area Number |
21591198
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
清井 仁 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90314004)
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Keywords | FLT3 / チロシンキナーゼ / 糖鎖修飾 / 細胞内局在 / 阻害剤 / 併用療法 |
Research Abstract |
本研究においては、正常及び変異FLT3分子が小胞体(ER)からゴルジネットワーク(GN)を経て糖鎖修飾を受け、細胞表面へ発現される分子機構の相違と、その結果生じている変異FLT3分子の細胞内局在部位の同定をリン酸化状態と活性化シグナル伝達機構との関連性を考慮する中で明らかにし、糖鎖修飾、細胞内局在の相違に基づき、変異FLT3分子に対するキナーゼ阻害剤の標的効果を増強する併用療法のコンセプトを確立することを目的としている。今年度は下記の研究成果を得た。 1. FLT3遺伝子変異と高頻度で重複するNPM1、IDH2遺伝子変異が、FLT3阻害剤による増殖抑制機構へ及ぼす影響を評価するために、正常及び変異NPM1、IDH2との共発現細胞を樹立した。 2. 変異IDH発現細胞では、citrateからαKGへの変換酵素活性が著明に低下していることが確認され、これにより、細胞内2HGの増加が生じていると考えられた。 3. FLT3-ITD/Mt-NPM1/Mt/IDH2発現細胞では、FLT3阻害剤による増殖抑制効果の減弱が認められた。 4. FLT3-ITD/Mt-NPM1/Mt/IDH2発現細胞においては、FLT3阻害剤添加後、MAPKの脱リン酸化が抑制されており、このことが細胞増殖抑制効果の減弱に関与していると考えられた。 5. 本来核小体に存在するNPM1分子に対し、変異NPM1分子は細胞質内に局在変異が生じているため、細胞質内で糖鎖修飾を受けずに活性化しているFLT3-ITD分子と変異NPM1分子の相互作用と変異IDH分子によるクエン酸回路代謝異常によってMAPKの脱リン酸化機構への影響が示唆された。 これらの現象は、糖鎖修飾を受けない変異FL3分子の存在が誘因と考えられ、糖鎖修飾阻害のみならず、新たな治療標的との併用により阻害剤活性を増強させることが可能であると考えられた。
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