2010 Fiscal Year Annual Research Report
悪性黒色腫シグナル伝達異常による免疫療法抵抗性の解明と克服法の開発
Project/Area Number |
21591445
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
桜井 敏晴 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20101933)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 知信 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20199334)
塚本 信夫 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20407117)
河上 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50161287)
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Keywords | 悪性黒色腫 / 免疫抑制 / 免疫療法 / シグナル伝達 / 樹状細胞 |
Research Abstract |
ヒト悪性黒色腫は、多様な免疫抵抗性機序が働き担がん生体での免疫抑制状態や免疫療法に対する抵抗性をもたらし臨床的にも大きな問題である。担がん生体では悪性黒色腫細胞の存在を起点とし免疫抑制カスケードが作動し免疫抑制環境が構築されるが、悪性黒色腫細胞の遺伝子・分子異常による免疫抑制機構の詳細は十分に解明されていない。今までに我々は悪性黒色腫に高頻度に起こる活性型変異BRAF^<V400E>によるMAPKシグナル亢進が複数の免疫抑制分子(IL6,IL10,VEGF等)の産生を誘導し、免疫抑制を起こすことを明らかにしたが、まだそのシグナル伝達経路は十分に解明されていない。本年度も引き続き、免疫抑制に関与する新規シグナル伝達分子の同定を目標として、ヒト悪性黒色腫細胞株に800種類のヒトキナーゼを標的とするsiRNAライブラリーを個々に作用させた後、その培養上清に分泌されるヒト樹状細胞のLPS刺激による抗腫瘍サイトカインIL-12産生の抑制を回復する因子に関与するシグナル分子の同定を試みた。その結果、培養上清の樹状細胞IL-12産生抑制能を回復させるキナーゼsiRNAを複数同定した。その内IL-12産生回復が最も強いものはserine/threonine kinase-X(STK-X)であった。STK-Xは、MAPKKの一つであるが、そのシグナル伝達経路はまだ十分に解明されておらず、下流の基質としてERKとNDR(Nuclear Dbf2-related protein)とPTP-PEST(PEST-type protein tyrosine phosphatase)の3種類が報告されているのみで、上流の活性化機構は不明である。我々はshRNA発現レンチウイルスベクターを用いて、STK-Xの発現を安定的に抑制した4種類の悪性黒色腫細胞株を作成して解析を加えた。STK-Xの発現抑制は、樹状細胞の機能を抑制する作用をもつ複数のサイトカイン(TGF-β1,IL-10など)の悪性黒色腫株からの産生を抑制できることが明らかになった。今後、同定したシグナル分子の多数の悪性黒色腫組織での発現活性化状態の検討と、さらに古典的MAPK経路、特に悪性黒色腫で高頻度活性化変異BRAF^<V400E>シグナルとのクロストークなど上流と下流のシグナル伝達機構の全容の解明を予定している。
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Research Products
(3 results)