2010 Fiscal Year Annual Research Report
新しい酵素標的・増感放射線療法KORTUCの腫瘍幹細胞に対する効果の検証
Project/Area Number |
21591610
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
小川 恭弘 高知大学, 教育研究部・医療学系, 教授 (90152397)
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Keywords | 放射線増感剤 / 過酸化水素 / ヒアルロン酸 / 放射線治療 / 低酸素細胞 / 酸素化 / リソソーム / アポトーシス |
Research Abstract |
KORTUC IIは2011年2月現在、108例に実施し、そのうち40例はI,II期乳癌の新患であり手術なしでの乳房温存療法を行い平均経過観察期間26.8ヶ月の現在、局所再発は1例のみであり、全例が生存中である他の68例は、進行/再発悪性腫瘍の患者であり、約半数の35例で腫瘍は臨床的に消失し(clinically complete response)、患者の1年生存率は88.4%、2年生存率は57.1%であった。KORTUC IIIは進行肝細胞がんの7例に施行し、KORTUC IVは局所進行膵臓がんに対して開創での局所増感+1回大量電子線照射(増感・開創照射)として行いこれまでに施行した15例のうち10例が生存中である。過酸化水素を用いた放射線増感については、約40年前に過酸化水素の動脈内投与の報告があり、あまり効果がなかったためか、その後、この方法は消滅した。われわれが開発した腫瘍内局注法は、ヒアルロン酸の出現とともにパワードプラー超音波や最新のCT(MDCT)など、最近の科学技術の進歩によって可能になったものと言える。さらに、昨年度は、放射線抵抗性の前立腺癌細胞に対して、培養液に低濃度の過酸化水素の存在下に放射線照射を行うことにより、容易にアポトーシスを惹起させることができ、これはリソソーム由来のアポトーシスであることを実験的に証明し、米国放射線治療学会の機関誌に論文を掲載することができた。さらに、本年度は、KORTUCの著明な局所治療効果のメカニズムついて乳癌幹細胞としてのCD44陽性細胞を治療前の生検査の病理組織検査時に免疫組織化学的に解析し、非手術での増感放射線療法では、CD44陽性細胞の有無にかかわらずKORTUC治療が有効であることを証明し、KORTUCの展開に新しい展望をもたらした。
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