2011 Fiscal Year Annual Research Report
好中球エラスターゼ阻害剤による致死的放射線肺障害の防止に関する実験的研究
Project/Area Number |
21591621
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
猪俣 泰典 大阪医科大学, 医学部, 教授 (90176462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 正嗣 大阪医科大学, 医学部, 講師 (00330077)
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Keywords | 好中球エラスターゼ阻害剤 / 放射線肺臓炎 / 肺線維化 |
Research Abstract |
好中球エラスターゼ阻害剤(シベレスタットナトリウム水和剤)が放射線肺障害の防止・低減に対して有効であることを明らかにし、放射線治療の結果生ずる肺障害の中で、最も重篤化して問題となる急性肺障害の発症の防止・低減に資することを目的として以下の検討を行った。 C57BL/6Jマウス(8週齢雌)を用いて14,16,18,20,22,24 Gyを肺に1回照射した。14-16 Gy照射群では照射後90目以上の経過観察にても死亡したマウスはなかった。しかし、18 Gy照射群では照射後10日目より死亡例がみられ、照射後40日目で生存率が40%まで低下した。同様に20 Gy照射群では照射後10日目、24 Gy照射群では照射後6日目にそれぞれ生存率が40%まで低下した。 照射後6日目,10日目,14日目に肺を摘出して組織学的に急性肺障害の有無と程度を観察した。 14-16Gyでは肺には目立った障害は生じなかった。しかし、18 Gy以上では浮腫・充血・出血等の急性反応が見られ、その程度は線量の増加とともに増強し、かつより早期に生じた。よって本実験モデルとして20 Gy1回照射が最も適していると考えられた。 次に肺に20 Gy照射後エラスポールを1,1+3,1+3+6,1+3+6+12時間目に腹腔内投与した。1+3+6時間目にエラスポールを投与した群で最も生存率の改善が見られ照射後6日目の肺障害の程度も軽微であった。 放射線障害防止効果をマウスの生存期間・生存率にて評価した結果をもとにして、マウスが死亡する予想時期の前にマウスを屠殺して摘出・保存した肺は後にHEおよび鍍銀染色にて線維化を観察しシベレスタットナトリウムの肺線維化防止効果を定量的に評価した。その結果、シベレスタットナトリウムは急性障害に引き続いて起こりうる肺線維化の抑制にも有効であることを明らかにした。
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