2010 Fiscal Year Annual Research Report
脳由来神経成長因子をターゲットにした癌性疼痛の遺伝子治療
Project/Area Number |
21592009
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
溝渕 知司 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (70311800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松三 絢弥 岡山大学, 病院, 医員 (50509437)
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Keywords | 癌性疼痛 / 脳由来神経成長因子 / 痛み / 遺伝子治療 |
Research Abstract |
脳由来神経栄養因子(BDNF)には9つのエクソンが存在するが、我々は以前に疼痛に関与すると思われるエクソンを特定し報告した。本研究では、骨性がん性疼痛モデルを作成し、BDNFの発現形態を局所及び脊髄後根神経節で検討し、がん性疼痛治療への応用をめざした研究を行っている。平成22年度は、以下の結果を得た。 1)骨性がん性疼痛モデルの作成 6週齢雄性Wistarラットの左脛骨骨髄内にMRMT-1(ラット乳がん細胞)を注入することにより骨がんモデルを作製した。経時的に痔痛評価を行うと同時に、モデル作製7、14、21日後に脛骨骨髄を採取しRT-PCRによりBDNFの発現形態を比較検討した。腫瘍組織、培養細胞も同様にBDNFの発現を調べた。また21日後の脛骨を採取し組織学的検討を行った。 2)同モデルによる疼痛評価 疼痛評価は荷重による評価とvon frey filamentによる評価を行った。 (結果)荷重による評価では、腫瘍の進展とともに経時的に荷重の減少が21日目まで認められた。von frey filamentによる検討では14日目までは疼痛の増強を認めたが、21日目には減弱していた。 3)局所におけるBDNF発現形態の検討 (結果)14日後に採取した骨髄ではsham群と比較してBDNFの発現の増加を認めた。また腫瘍組織、培養細胞においてもBDNFの発現を確認した。組織学的には腫瘍細胞に一致してBDNFの染色を認めた。 この結果は、骨がんモデルにおいてBDNFが腫瘍局所での神経伸長および疼痛の増強に関与している可能性があると推察している。 4)脊髄後根神経節におけるBDNF発現形態の検討 (結果)28日後に採取したDRGでBDNFの発現の増加を認めた。また21,28日後に採取したDRGでexon Iの発現の増加を認めた。この結果は、がん性疼痛においてもDRGでBDNF-exon Iを抑制することにより痔痛を緩和させることが出来る可能性が示唆された。 平成23年度は、上記の結果をもとにさらに詳細な病態解明やDNAデコイの効果をこのがん性疼痛モデルで確認することを考えている。
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