2011 Fiscal Year Annual Research Report
多機能タンパク質CASKの内耳における分子機能解析
Project/Area Number |
21592171
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
本田 晶 独立行政法人理化学研究所, 感覚器官発生研究チーム, 研究員 (50443023)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
喜多 知子 独立行政法人理化学研究所, 感覚器官発生研究チーム, 研究員 (20362519)
|
Keywords | 内耳発生 / 内耳神経発生 / 転写制御 / ニューロフィラメント |
Research Abstract |
1.CASKと転写制御 前年度に引き続きおこなった免疫沈降実験により、新たに何種類かの核タンパク質(SAF-B1,SP120,MOV10,hnRNP M,ASF/SF2)を共沈物中に検出した。これまでにCASKが核内において転写活性の調節に関与するとの報告があり、また申請者らはCASKが内耳神経細胞の核内に発現していることを見いだしていることから、CASKがこれらの分子と複合体を形成し、転写制御などの機能を有する可能性が考えられる。これまでのところ、SP120については免疫染色法により、マウス内耳神経細胞の核内に発現していることが認められた。これらの結果から、内耳神経細胞でCASKがSP120の機能に関与する可能性が示唆された。 2.CASKと神経軸索 これまでにおこなったマウス内耳の免疫染色実験の結果から、CASKが内耳神経において、ニューロフィラメント(NF)と呼ばれる神経細胞特異的な中間径フィラメントと同局在を示すことが明らかとなった。中間径フィラメントは一般的に細胞の形を決定する上で重要な機能を果たすとされているが、NFの神経細胞における機能にはまだ不明な点が多い。これまで、GSK3βやCDK5によるNFのリン酸化が神経軸索の正常な形成に重要であることが報告されている。申請者らはCASKノックアウトマウスで内耳神経における細胞数の減少と軸索の形成異常とを見いだしており、この結果から、内耳神経細胞においてはCASKがNFのリン酸化酵素として働き、軸索の成長や軸索内の物資輸送に関わっているのではないかと考えている。 これまでの申請者らの研究により、CASKの遺伝子異常患者において認められた先天性難聴は、有毛細胞の減少によるものではなく、主に内耳神経細胞の減少および軸索形成異常によるものである可能性が強く示唆された。
|