2011 Fiscal Year Annual Research Report
siRNAによるCaspase抑制を用いた新たな緑内障治療薬の開発
Project/Area Number |
21592260
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
沖波 聡 佐賀大学, 医学部, 教授 (70089100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 憲 佐賀大学, 医学部, 准教授 (60295144)
石川 慎一郎 佐賀大学, 医学部, 助教 (00404129)
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Keywords | 神経保護 / アポトーシス / 網膜視神経節細胞 / 緑内障 |
Research Abstract |
緑内障は視神経節細胞の不可逆的な障害により生じる疾患で、本邦における中途失明の原因として最も頻度が高い。緑内障は眼球内の圧力(眼圧)の上昇が視神経乳頭に圧迫を与え、眼球から大脳への情報伝達の働きを担う視神経節細胞の軸索輸送障害を引き起こすことと、視神経周辺変性や修復異常により、視神経に直接的障害あるいは、循環障害を惹起し発症すると考える機械的圧迫説や循環障害説が古くより知られている。これらの病因に対し、眼圧を下げて機械的な圧迫を除去し、視神経節細胞の障害を減ずることが、現在の唯一のエビデンスを有する緑内障治療である。siRNA (small interfering RNA)は核酸の一種であり、ターゲット遺伝子を抑制する有力な方法として、2006年のノーベル医学生理学賞受賞したことが示すように、近年非常に注目されている。siRMにより組換えが起こったDNAは継代される特徴を有しており、一度の作用で継続的に性質を維持できる一方で、低分子で生体内では早期に代謝されることが確認されている。これに対して、アテロコラーゲンとsiRNAとの複合体を用いた検討により、生体内で安定性と取り込み率がsiRNA単独導入と比較して、飛躍的に向上することが2007年に報告されており、徐放性を有することにより必要濃度を維持するための層薬剤量を抑えるドラッグデリバリーの方法として、注目されている。当施設では眼圧上昇による視神経節細胞障害を引き起こした緑内障モデルラットに対して、Caspase3、Caspase9をターゲットとするsiRNAを硝子体腔内に導入する実験型を用いて検証を行い、神経節細胞層にsiRMが到達することと、眼圧上昇による網膜神経細胞数の減少が抑制されるデータを準備実験にて得ており、本研究では多面的に、siRNAも用いたcaspaseの抑制による神経保護効果について検討を行い、さらにドラッグデリバリーの面から薬剤効果の最大化の可能性について、検討を行った。本研究ではアテロコラーゲンの硝子体腔内投与では、網膜視神経節細胞の形態的な変化は認めず、眼内における除法効果を持たせる目的での、アテロコラーゲンの有用性について確認を行った。Caspase3とアテロコラーゲンの混合物を硝子体腔内に導入を行い、虚血再灌流モデルにて視神経節細胞アボトーシス誘導モデルにおいて、caspase3単独硝子体腔内投与と比較して、惹起される網膜視神経節細胞の障害が抑制されることを確認した。一方でcaspase9とアテロコラーゲンの混合物を導入して行った、同モデルの実験においては網膜視神経節細胞の障害抑制効果は、caspase9単独導入群と差異を認めなかったことから、今後の治療薬開発にあたっての標的とするsiRNAの選定が、特に重要な点であることを確認した。
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