Research Abstract |
膵・胆管合流異常における胆道上皮の発癌機序は解明されていない。RNAレベルでの変化に注目し,小児において既に生じている遺伝子の発現異常をmicroarrayにより網羅的に検討し,さらにRT-PCRにて発現異常を確認した。発現亢進遺伝子のうち,4遺伝子(Dひ0買2,Dひ(Duox2,DUoxA2,ID1,BMF)の蛋白レベルでの発現を検討した。2008年から2010年に手術した合流異常19例(5か月~11歳),肝芽腫5例(対照,1~4歳),胆石症5例(5~12歳)の胆嚢を免疫組織学的に検討した。胆嚢はホルマリン固定後パラフィン切片とし,脱パラフィン後に各種抗体で染色した。使用抗体は,DUOX2抗体(DUOX2 Y-15,Santa Cruz),DmXA2抗体(Anti-DUOXA2, Sigma-Aldrich),ID1抗体(Id1 C-20, Santa Cruz》,とBMF抗体(PAB2443, Abnova)。ABC法で使用し,DABで発色した。細胞質の発現は3段階に評価し,核での発現はlabelingindex(LI)で比較した。DUOXA2とDUOX2は細胞質で発現し,ID1とBMFは細胞質と核で発現した。この発現パターンは合流異常,対照,胆石例で差は見られなかった。BMFのみ,合流異常例で対照と胆石例に比して細胞質と核の両者に有意に高発現がみられた。躍はアポトース促進として働くことが知られている。BMFは合流異常において胆嚢上皮の細胞回転亢進に伴うアポトーシスに関与すると考えられた。 膵・胆管合流異常の症状遷延/悪化症例での内視鏡的ドレナージは,従来危険とされたが,過去の研究による症状発現機序に基づけば,むしろ安全かつ有効であることが予想された。実際に13例で実施され良好な成績を得て,新たな治療法として確立された。
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