Research Abstract |
本年度は,応急仮設住宅から帰村後5年目であり,高齢被災者の身体機能とストレス評価,面接の最終調査を行った. 1身体機能評価 中越地震被災地において,平成24年2月に体力とストレス測定を実施し,同意の得られた対象者は12名であった.尿中8-OHdG値は全体平均9.7±3.9ng/mgCreであり,応急仮設退去後5年間の有意な経時変化はなかった.平成20年から平成24年の夏期および冬期調査の対象は女性4名で,体重が夏期に減少し冬期に増加,筋肉率が夏期に増加し冬期に減少,体脂肪率が夏期に減少し冬期に増加し,いずれも有意差をみとめた.他の項目では有意な変化はなかった.特に女性において,応急仮設住宅退去後の体重減少と握力低下,体組成の季節変化があり,再建に伴う生活変化や夏期の農作業従事が影響していると推測される. 2応急仮設住宅居住後の生活変化 中越地震の被災高齢者に同意を得て平成23年8月に1名,平成24年2月に5名の面接調査を行った.平均年齢74.0±8.5歳,男性2名,女性3名であった.語りの構成要素は,集落が11世帯に減少,高齢者ばかり,土地を失い畑仕事が中心,自給自足,自分の食べる分があればいい,と集落規模や個人の活動が縮小したことが挙げられた.再建時には,新築の住居は1か月くらい落ち着かなかった,豪雪に見舞われた,なるようにしかならない,やっぱり帰ってきて良かった,ふるさとに来たなと思う,部落の人と行動するのが大事,歳時記の行事に皆が参加,と徐々に生活を取り戻した様子を語った.さらに,「ふるさと会」の設立で活気が出た,ボランティアを多く受け入れている,震災つながりで多くの人と知り合った,インターネットで活動を紹介,楽しみが増えた等,再建後の新たな活動の成果を表出していた.高齢化,過疎化が進む被災地において,再建した高齢者が伝統文化を継承しながら,地域を活性化させる基盤を持ち続けている現象は,他の被災地の再建モデルになり得ると考えられる.
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