2011 Fiscal Year Annual Research Report
慢性疼痛下におけるモルヒネ鎮痛耐性不形成メカニズムの解明
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21600012
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
丹野 孝一 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (20207260)
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Keywords | モルヒネ / 鎮痛耐性 / 炎症性疼痛 / 一酸化窒素 / NOS1AP / DNAマイクロアレイ解析 / マウス |
Research Abstract |
モルヒネの慢性投与により鎮痛耐性や精神的・身体的依存が形成されるが、がん患者の痺痛治療目的でモルヒネを使用する限り、それらはほとんど生じないことが臨床上明らかにされている。平成22年度までの研究で、モルヒネ鎮痛耐性および身体的依存形成に及ぼす炎症性痺痛の影響について検討を行ったところ、ホルマリン痺痛下においてモルヒネ鎮痛耐性および身体的依存の指標となるナロキソン誘発体重減少や下痢が抑制されることを見出した。また、これらの抑制機構を検討した結果、一酸化窒素のプレカーサーであるL-アルギニンをモルヒネ反復投与ごとの20分前に腹腔内投与することにより有意に減弱されたが、D-アルギニンによっては影響されないことを明らかにした。以上の結果から、ホルマリン痺痛下におけるモルヒネ鎮痛耐性および身体的依存の抑制機構として、いずれも一酸化窒素の産生低下が関与している可能性が示唆された。そこで、平成23年度はホルマリン痺痛下におけるモルヒネ鎮痛耐性の抑制メカニズムを解明する目的でDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、腰髄におけるNOSIAPの発現がナイーブマウスと比較してモルヒネ耐性マウスでは137%に増加したが、ホルマリン痺痛下ではナイーブマウスのレベルまで低下した。このことから、ホルマリン痺痛下におけるモルヒネ鎮痛耐性の抑制メカニズムとして、モルヒネ反復投与により生じる脊髄でのNOS1APの発現量の増加とそれに伴う一酸化窒素産生の増加がホルマリン痺痛下では抑制されることに起因する可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炎症性疼痛下においてモルヒネの鎮痛耐性および身体的依存の形成が軽減され、そのメカニズムとして一酸化窒素の産生低下が関与していることを見出していることから、ほぼ計画通りに研究が進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症性疼痛下におけるモルヒネの鎮痛耐性および身体的依存不形成メカニズムについて一酸化窒素系および一酸化窒素系と関連があるMAPキナーゼに焦点を当て詳細な解明を試みる。
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