2009 Fiscal Year Annual Research Report
音声学的測定法と計算論モデル手法を融合した対乳児発話音声の解析
Project/Area Number |
21610028
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
馬塚 れい子 The Institute of Physical and Chemical Research, 言語発達研究チーム, チームリーダー (00392126)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 英明 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (70308261)
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Keywords | 音声学 / 画像、文章、音声等認識 / 情報工学 / 認知科学 / 教育系心理学 |
Research Abstract |
本研究では、計算論モデル手法と音声学的測定法を融合して、対乳児発話に現れる母音の特性を解析することを目指している。今年度は、各手法において今後の研究の基礎となる作業を中心に行った。まず、研究分担者がこれまで構築してきたSOMモデルを、長母音、短母音の区別も含む、母音カテゴリーを学習することができるように展開するための検討を行った。母音の質を区別するためには時間軸を参照しなくても精度を上げることが出来るので、これまでのモデルは時間軸を参照しないものであった。しかし、長母音、短母音を区別するためには時間軸を参照することが必要になる。Yamashita & Tani, 2008)が提案したMultiple Timescale Neural Network Modelは、時間軸の特性を考慮したモデルであるので、このモデルが母音の獲得に有効であるかどうかを検討した。少数の母音、子音からなる単語を用いて予備的実験を行って検討した結果、いくつかの問題点が明らかになったので更に検討が必要である。また、音声学的測定のサイドでは、研究代表者のチームが構築した「理研母子会話コーパス」と国立国語研究所が構築した「日本語話し言葉コーパス」を解析して、それぞれのコーパスに含まれる母音のvowel quality、voice qualityおよび母音のフォルマントの特性を解析し、大人が大人同士で話しているときの母音、大人が子供に話しかけるときの母音、大人が講演で話しているときの母音がどのような特性を持つかを解析した。その結果、従来の対乳児音声に見られると報告されている母音空間の広がりは、大人の講演音声でも観察され対乳児音声に特有の特性ではないことが確認された。さらに、対乳児音声に現れる母音はほかの母音に比べて「やさしい」声質で、母音内のフォルマントの分散も大きいことが分かった。
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