2011 Fiscal Year Annual Research Report
音声学的測定法と計算論モデル手法を融合した対乳児発話音声の解析
Project/Area Number |
21610028
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
馬塚 れい子 独立行政法人理化学研究所, 言語発達研究チーム, チームリーダー (00392126)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 英明 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (70308261)
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Keywords | シミュレーション / 母音獲得 / 長短母音 / 対乳児音声 / SOM |
Research Abstract |
23年度は対乳児音声に含まれる母音のフォルマント特性を解析し、従来主張されているように対乳児発話の母音は明瞭度が高いかどうかを検討した。その結果、従来どおり母音空間を測定すれば、母音空間は広がっていたが、対乳児音声に含まれる母音は分散が大きく、トークンの分散の大きさを考慮して音素の明瞭度を測るマハラノビス距離を計算すると、対乳児音声の母音は体制神発話に比べて明瞭とは言えないことが分かった。同じ母親の読み上げ音声の母音は、母音空間が広がっているうえに分散も小さく明らかに明瞭度が上がっていた。乳児の音素カテゴリー獲得の研究では、入力のばらつきの大きさがロバストな音素カテゴリーの学習につながることが知られている。対乳児発話の分散も母音カテゴリーの学習に貢献すると考えられる。 また、昨年度までに日本語対乳児会話コーパスに含まれるすべての長母音、短母音を抽出しその持続時間を計測し、日本語の対乳児音声に含まれる長母音と短母音はどのような分布を示すのかを検討した。その結果、長母音の分布は短母音の分布に完全に包括されることが分かった。これは、母音の持続時間のみを指標にして、日本語には長母音と短母音が独立したカテゴリーとして存在するということを学習するのは不可能であることを示している。しかし、発話内での母音の位置、アクセントの有無などのトップダウン情報を加味すれば、長母音と短母音が異なるカテゴリーとして学習可能であることも分かってきた。今年度は、これらの結果をもとに長短母音の獲得を数理モデルを用いて検討した結果、ベイズモデルが有効であることが示唆された。 両研究成果は現在論文として執筆中である。
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