2009 Fiscal Year Annual Research Report
回折現象を取入れたSEM像コントラストの定量解析化とナノ構造解析への挑戦
Project/Area Number |
21651054
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
桑野 範之 Kyushu University, 産学連携センター, 教授 (50038022)
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Keywords | 走査型電子顕微鏡 / 像コントラスト / 電子回折 / 微細構造解析 / 2次電子 / 後方散乱電子 / チャネリング / 転位 |
Research Abstract |
本研究課題では、これまでは試料表面形状観察と(平均)組成分析を行うに過ぎなかった走査電子顕微鏡(SEM)を、微細構造解析をも行えるように像コントラストを理論的に検討し、定量化を図ることを目的としている。本年度は、GaN中の転位によるコントラストに注目し、観察条件に伴う変化を調査した。 まず、加速電圧に対しては、数kV以上であることが必要である。これは、入射電子がある程度は試料結晶中に入る必要があるためである。バルク結晶では17kV以上になると、結晶内で電子線が拡がるためコントラストも消失の方向に向かう。ただし、薄膜試料では30kV以上でも明確なコントラストが得られた。 電子検出器の種類に対する影響では、後方散乱電子に敏感な検出器を用いた場合に高いコントラストが得られた。これは転位コントラストがチャネリングコントラストによるためである。 試料を数度傾斜していくと、コントラストが一旦消失した後再び現れることが確かめられた。これに対してワーク長を変化させてもコントラストにほとんど変化はなかった。このことは、試料から出てくる後方散乱電子の角度依存性はほとんどないが、入射電子線の方位に敏感であることを示唆している。すなわち、転位コントラストは入射電子による非弾性散乱電子によるもので、その強度は入射電子の回折(チャネリング)の状況に依存することを示している。その結果、SEMで転位が観察できるかどうかは入射電子線の干渉性(平行性と位相整合性)に支配されることを示している。 同一試料を走査透過電子顕微鏡(STEM)の環状暗視野(ADF)法で観察した結果、SEM像と完全に対応しながら明暗が逆転したコントラストを示すことを初めて見出した。この結果は、SEM-チャネリング像とSTEM-ADFは本質的に同一のコントラスト発生機構であることを示している。
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