2010 Fiscal Year Annual Research Report
回折現象を取入れたSEM像コントラストの定量解析化とナノ構造解析への挑戦
Project/Area Number |
21651054
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
桑野 範之 九州大学, 産学連携センター, 教授 (50038022)
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Keywords | 走査型電子顕微鏡 / 像コントラスト / 電子回折 / 微細構造解析 / 二次電子 / 後方散乱電子 / チャネリング / 格子欠陥 |
Research Abstract |
本研究課題では、走査型電子顕微鏡(SEM)における像コントラスト発生機構を詳細に解析し、これまでは困難と考えられていた材料内部の結晶学的な情報を得るための原理を明らかにしようとするものである。昨年度において、後方散乱電子(BSE)を効率良く検知することにより結晶内にある転位などが直接観察できることを示した。この現象はこれまでチャネリングコントラストとして知られている発現機構と同じであるが、転位のようなミクロな組織までも明確に観察できることは特記に値する。 本年度においては、転位コントラストに寄与するチャネリング現象を詳細に検討した。電子チャネリングは本質的には回折現象であるので、入射電子線(primary electron)がより平行で干渉性が高い方が優位となる。すなわち、primary electronがチャネリングにより原子コラム上(あるいは原子間位置)により収歛すれば、より多く(より少ない)の非弾性散乱電子が発生することになる。転位があれば、その箇所で原子コラム位置がずれるので非弾性散乱電子の発生量が変化し、転位の像コントラストとなると考える。また、試料を数度傾斜することによりコントラストの明暗が逆転する現象も説明することができる。すなわち、非弾性散乱(非干渉性)電子を検出するが、その強度変化はprimary electronの干渉効果に由来している。本質的には走査透過型電子顕微鏡(STEM)の環状検出暗視野像(ADF)と類似していると云える。この考え方により、昨年度見出したSEM-SE像とSTEM-ADF像の相似性が説明できる。 来年度は、さらにこの考え方を発展させ、これまでは不可能と考えられている積層欠陥像出現の可能性を探る。
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