2011 Fiscal Year Annual Research Report
一個の細胞における遺伝子発現を解析できる新規技術の開発と応用
Project/Area Number |
21651085
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野島 博 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (30156195)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥崎 大介 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (00346131)
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Keywords | PCR / Chum-RNA / 線形増幅 / mRNA増幅 / センス鎖 |
Research Abstract |
我々が開発したChum-RNA増幅法は指数関数的増幅を行うPCRとは異なる原理に基づく線形的増幅を可能にする技術である。PCRでは実現できない、cDNAライブラリーに含まれる多種類のcDNA分子を増幅時の偏在なく包括的に増幅できるという特徴を持つ。実際、我々はChum-RNA増幅法を用いて1個相当のヒト細胞から高品質なcDNAライブラリーの作製に成功してきた。当該年度ではChum-RNA増幅法の新しい応用として、RT-PCR法の感度を格段に上昇させる技術の開発に取り組んできた。まず、微生物(手始めに大腸菌)の種特異的高感度検出法の開発に着手した。大腸菌は1個の細胞に数万分子の16SリボゾームRNA(rRNA)を持つので、16SrRNAに対応するChum-RNA(rChumと命名)を合成し、酵素反応の進行が困難である極微量rRNAに対してChum-RNA増幅すれば、大腸菌のゲノムDNAのPCRあるいは16SrRNAのRT-PCRによる増幅に比べて感度の上昇が期待される。実際にはrRNAの逆転写プライマーDNAのアニール領域に相同なrChumを設計した。これを逆転写反応に多量に添加することで反応系中の見かけの鋳型濃度を増大させ、反応活性が反応系中の基質分子濃度に依存する酵素反応において活性の上昇を試みた。結果、極微量の鋳型rRNAからPCR反応で増幅可能な逆転写産物を得ることができた。ヒト細胞は大腸菌に比べて100倍のrRNA(1細胞あたり数百万分子)を持つので一層の感度上昇が見込める。本手法は従来と全く同様の反応系にrChumを添加するだけで、一個の細胞未満の高感度な標的RNA分子の増幅・検出を可能にするので、ウイルス由来RNAなど他のRNA分子種にも広く適用可能である。基礎研究のみならず微生物感染症やそれに係る自己免疫疾患等の疾病の早期診断等の臨床応用へも展開したい。
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Research Products
(2 results)