2011 Fiscal Year Annual Research Report
「公共性」概念を基軸とした、パブリックアートの社会哲学的研究
Project/Area Number |
21652001
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
柳澤 有吾 奈良女子大学, 文学部, 教授 (90275454)
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Keywords | 公共性 / パブリックアート |
Research Abstract |
日本のパブリックアートに関する議論を「野外彫刻」論中心の狭い枠組みから解放し、「公共性」を軸としてパブリックアートの諸要素・諸次元の含意を明らかにするという目的に即して、研究実施計画に挙げた項目は以下の2つである。 (1)基礎的作業の一環として、蓄積の多い欧米を中心とした議論の分析・検討 (2)日本におけるパブリックアート歴史と現在を読み解く上で重要な取り組みに関する情報収集と分析(1)については、記憶の形象化の問題をめぐって前年度に集中的に取り組んだベルリン・ユダヤ博物館に関する作業に区切りをつけ、最終年度でもあるので、議論の整理とモデル化に取り組んできたが、論点も素材も多岐に亘るため、成果を最終的に整理して公表するにはなお若干の時間を要する見込みである。 (2)に関しては、ビエンナーレ・トリエンナーレ形式の長期的催しと連動させた、地域に根差した新しいパブリックアート形成の動きとは別に、意識的に非日常性を演出するタイプのイベント(「六本木アートナイト」)を調査した。地域コミュニティとは別の「場」でアートと公共性の問題を考える上で興味深い事例であった。また、東日本大震災を受けて震災・災害と記憶の観点も研究計画のなかに織り込み、まずは基礎的・思想的側面についての論考「『共感の遠近法』と『罪悪なき罪悪感』」を『大学の現場で震災を考える』と題する書籍に掲載した。阪神淡路大震災など過去の災害との比較を含めて、記憶の形象化の側面から具体例に即して検討を加えるのは今後の課題である。
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