2010 Fiscal Year Annual Research Report
美術とスポーツにおける身体観の相違についての理論的・実践的研究
Project/Area Number |
21652014
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
小松 佳代子 東京芸術大学, 美術学部, 准教授 (50292800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 康 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (00183377)
宮永 美知代 東京芸術大学, 美術学部, 助教 (70200194)
青柳 路子 東京芸術大学, 美術学部, 助教 (70466994)
生井 亮司 武蔵野大学, 人間関係学部, 講師 (20584808)
猪瀬 昌延 信州大学, 教育学部, 准教授 (40597340)
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Keywords | 美術教育 / 美術解剖学 / 身体 / ラグビー / 感性教育 |
Research Abstract |
1.理論研究としては、身体観が深化していく機制について多角的に考察するために、さまざまな観点からの研究から学んだ。6月、10月、12月、2月の合計4回の研究会を持った(3月に第5回目を予定していたが、東北関東大震災による様々な影響を考慮して中止した)。内容は、(1)「修養」という学校教育以外の場で行われてきた人間形成のための工夫についての研究、(2)美術制作を行う際に身体に感じるリズムからスポーツにおけるリズムとの相違について考える研究、(3)宮大工の師弟関係における「わざ」の継承で生じていることを丹念に追った研究、(4)スポーツ科学の観点から動作予測に関する実証的研究などの発表を受けて議論をした。こうした研究から、美術とスポーツにおける身体は、制作者やスポーツ選手の内的感覚というだけでなく、自らの状況を捉える心理的な側面や、環境世界や他者といった外界との関係において深化するということが学ばれた。美術もスポーツも個々の身体において行われることであるが、個人の身体にとどまらず普遍的な価値や他者の身体との関係において捉えるべきことが明らかになった。 2.実践研究としては、昨年度に行った試行プログラムを受けて、スポーツ選手に対する美術プログラムとしては、人体クロッキーが最も適しているという結論を得た。そのため今年度は、2つの大学ラグビーチームの協力を得て人体クロッキーのプログラムを行った。人体クロッキーにおいて最初はモデルを見る時間が少なく、自分のなかにある「人型」を描いてしまう場合が多かった。また描く線も少なく、描くことに対するとまどいが見られた。しかし、回数を重ねるごとにモデルを注視する時間が増え、線の数も増えていった。こうした変化から、このプログラムを通して、スポーツ選手の内的意識と身体の動きとのズレが照合されていき「遂行的イメージ」が働いていることが明らかになった。また美術は自らの意識や身体の動きが痕跡として残るという点に特徴があり、その痕跡を自ら見ることで内感が強化されていくこともわかった。この点についての詳細な分析は、美術教育研究会大会で発表した。
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Research Products
(4 results)