Research Abstract |
本研究の目的は,平成16年に死去したピアニスト,園田高弘の功績を,演奏と教育の両面から明らかにすることにある。最終年度に当たる平成23年度には,前年度までに移送を完了していた園田の蔵書と所蔵楽譜のデータベース化およびデータの確認作業を行った。その結果,東京藝術大学音楽研究センター内に保管される園田文庫の総資料数は,約4,000点に上ることが明らかとなった。園田文庫のデータベース化がほぼ完了したことにより,近い将来,同センターにおいて,これが公開される予定である。 また,これらの資料に基づき,(1)園田の著書と蔵書との照合,(2)所蔵楽譜への書込みとCDの演奏との照合,(3)校訂譜と多様な所蔵楽譜との比較,の3つの作業を行った。(1)では師シロタによる指導の一端を,また(2)では園田の演奏研究者としての姿勢を明らかにすることができた。また(3)では,フレージングやデュナーミク等,多様な解釈可能性の中から1つが選択されるに至る,校訂譜完成までの道筋の一部を浮き彫りにするとともに,園田の残した教育者としての功績の一部を明らかにすることができたと考えている。 なお本年度,録音時に使用された楽譜やCDの基になった録音テープ等を遺族より借り受ける予定になっていたが,諸事情により実現できなかった。これまでに得られている仮説を実証するためにも,今後ぜひ実現させたい。 さらに,3年間にわたる研究の成果を,論文および報告書の形態で発表した。その具体的な内容は,本報告書「13.研究発表」に示す通りである。
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