2011 Fiscal Year Annual Research Report
外国にルーツを持つ母親のためのライティング・ストラテジーに関する基礎的研究
Project/Area Number |
21652048
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
内海 由美子 山形大学, 基盤教育院, 准教授 (20292708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仁科 浩美 山形大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (10431644)
富谷 玲子 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (40386818)
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Keywords | 外国にルーツを持つ母親 / ライティング・ストラテジー / 日本語習得支援 / 結婚移住女性 / 読み書き能力 / 社会参加 |
Research Abstract |
平成23年度は、21年度から2年間にわたって実施した聞き取り調査の音声データの文字資料化を完了した(幼稚園・保育園・小中学校の職員9人、外国人の母親25人、日本人の母親4人)。また、連絡帳24冊の画像データ化、文字資料化を進めた。連絡帳の文字資料をもとに、代表者・分担者の3名でデータセッションを行い、分析のための枠組みを作り、漢字圏出身者の書いた連絡帳の分析を試行した。 聞き取り調査の結果は、2011年度日本語教育学会春季大会のパネル「教室外の世界で行われている『評価』-その多様性を探る意義-」で「幼稚園における連絡帳のやりとりに対する評価とビリーフー外国人保護者の書き言葉コミュニケーションに対する支援に向けて-」のタイトルで内海が発表し、『神奈川大学言語研究』で富谷・内海・仁科が「子育て場面で外国人保護者が直面する書き言葉の課題-保育園・幼稚園児の保護者を対象とした調査から-」にまとめた。 連絡帳の分析結果の一部は、神奈川大学の公開研究会で「母親に必要な書き能力を考える-漢字圏出身者の幼稚園・保育園の連絡帳から」のタイトルで内海が発表した。 聞き取り調査からは、幼稚園・保育園とのやりとり、特に連絡帳という書き言葉でのやりとりに自信が持てない外国人の母親の姿が浮かび上がった。連絡帳の分析からは、漢字圏出身者であっても、日本人の母親に比べると、連絡帳に記載する回数は5分の1以下で、特に、園からの働きかけに対する応答が極端に少ないという特徴があることがわかった。また、日本人の母親は、連絡帳でのやりとりを介して園との信頼関係作りを行っているのに対し、外国人の母親は、体調や登降園時間の伝達など必要最小限の記述にとどまっていることがわかった。以上の結果から、園と信頼関係を築いて主体的に子育てに関与するためには、外国人の母親に対して書き言葉の習得支援が必要であることが明らかになった。
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