2011 Fiscal Year Annual Research Report
関数体上定義される保型関数の周期とL関数の積の特殊値について
Project/Area Number |
21654002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 智 東京大学, 数物連携宇宙研究機構, 特任助教 (30372577)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 正大 京都大学, 数理解析研究所, 助教 (90346065)
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Keywords | 関数体 / 有限体 / 保型関数 / 周期積分 |
Research Abstract |
はじめに、有限体上のある曲線を定め、その関数体を数体の類似として扱う。そのために素点をひとつ固定し、それを無限素点と呼ぶことにする。研究計画で挙げた問題は、関数体上の一般線型群上の保型関数をある領域上で積分した際に、その保型L関数が得られるかどうか、というものであった。一般線型群には対角成分全体のなす極大トーラスが部分群としてあるが、その無限素点での局所体を成分にもつような部分が、積分領域である。関数体における保型関数は、アデール値一般線型群の数論的部分群の関数体における類似による商の上の関数とみなすことができるが、この空間は同時に、曲線の上のベクトル束のモジュライとみなせる。つまり、積分領域はモジュライ解釈を持っている。 上記の問題に関して、研究分担者である安田正大氏は、関数体が射影曲線の関数体である場合に結果を得ている。これが可能であるのは、射影曲線上のベクトル束は標準的なもののツイストの直和に同型であるという事情があり、高い種数の場合に比べてモジュライの扱いが容易であるということが挙げられる。種数が1である場合にも、ベクトル束の分類はなされているため、モジュライの記述が可能であり、何らかの計算が可能であると思われたが、その手法とは別の形の計算結果を安田氏は得ている。 この問題にまつわる情報収集として大切なのは保型関数論の専門家による「保型関数の積分領域としては、極大トーラスというのは小さすぎて、L関数のような真っ当な不変量が、その上の積分として計算されるとは想像され難い」というリマークである。これは、この積分の計算が、何か特殊事情を含んでいるため可能となったと想像されるが、申請者はその根拠を挙げることはできなかった。
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