2009 Fiscal Year Annual Research Report
大気中の揮発性・半揮発性有機酸の測定とエアロゾル生成・変質・吸湿特性への寄与
Project/Area Number |
21654079
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
河村 公隆 Hokkaido University, 低温科学研究所, 教授 (70201449)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 雄三 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (60376655)
|
Keywords | 大気エアロゾル / 吸湿特性 / 有機酸 / 光化学反応 / 分解 / ギ酸 / 酢酸 / 乳酸 |
Research Abstract |
低分子有機酸のガス・粒子相のサンプリングは、以下の方法によっておこなった。2段フィルターカートリッジを用いて大気を吸引した。1段目に中性石英フィルターを(直径47mm)、2段目にアルカリ含浸フィルターを(直径47mmの石英繊維濾紙にKOHを含浸させ乾燥させたもの)を装着した。1段目では、粒子状の有機酸を採取し、第2段目では、ガス状有機酸をカリウム塩として捕集する。有機酸の測定には、河村らが開発したフィナシルエステル・GC法(Kawamura et al.,1985)を用いた。1段、2段目のフィルター試料は、超純水で抽出後、0.1MKOHまたは0.1M HCl水溶液にてpH=8.5に調製したのち、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮する。濃縮液を陽イオン交換樹脂に通すことによりすべての有機酸をRCOO^-K^+の化学形にする。次に、溶離液を濃縮・乾燥後、誘導体試薬(α,p-ジブロモアセトフェノン)と触媒(クラウンエーテル:dicyclohexyl-18-crown)を加え、アセトニトリル溶媒中で80℃,2時間反応させ、カルボン酸をp-ブロモフィナシルエステルに誘導体化した。有機酸エステルをシリカゲルカラムにより精製した後、ヒドロキシ有機酸のOH基をBSTFAによりTMS化した。札幌および西部北太平洋で採取した試料から分離した有機酸エステルをキャピラリーGCにて測定した結果、C_1-C_<10>直鎖、側鎖および芳香族の有機酸を検出した。更に、乳酸、グリコール酸(ヒドロキシ有機酸)を検出し、それぞれを定量した。また、GC/MSを用いて、化合物の同定を行った。 本研究では夏季の西部北太平洋において初めて低分子モノカルボン酸(C_1-C_<10>、安息香酸、乳酸、グリコール酸を含む)を検出した。C_1-C_<10>、安息香酸の平均濃度は251ng m^<-3>であった。この値は同じ海域において報告されている海洋エアロゾル中の主要成分であるC_2-C_<10>低分子ジカルボン酸の平均濃度に比べて2~4倍高い。また、本研究におけるC_1-C_<10>低分子モノカルボン酸の平均濃度は都市・郊外域の大気中の値に比べて1/4~1/50である。また、本研究ではガス+エアロゾル相の全低分子モノカルボン酸に占める乳酸の割合が陸域に比べて高い(西部北太平洋;8.5%、札幌大気;1.0%)ことを発見した。本試料中では乳酸・グリコール酸を除く低分子モノカルボン酸のうち、約90%がガス相に存在していた。ガス相においては酢酸が一番高い値(137ng m^<-3>)を示し、次いでギ酸(64ng m^<-3>)の順であった。エアロゾル相においては乳酸が一番高い値(25ng m^<-3>)を示し、次いで酢酸(13ng m^<-3>)、グリコール酸(7.3ng m^<-3>)、ギ酸(4.5ng m^<-3>)の順であった。一方、ガス相の乳酸、グリコール酸は低い値を示した。観測期間中、特に外洋域で低分子モノカルボン酸濃度が高く検出され(最大で1295ng m^<-3>)、その地域は後方流跡線解析から海洋起源の気塊の影響を受けていたことが分かった。また、C_1-C_<10>モノカルボン酸は汚染起源のトレーサーである安息香酸との相関を示さないことから人為起源の影響は少ないと考えられる。
|
Research Products
(8 results)