2010 Fiscal Year Annual Research Report
農業生産・農産物流通活動に対する倫理学的研究の有効性検証
Project/Area Number |
21658078
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
高橋 太一 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター・東北地域活性化研究チーム, 主任研究員 (70370624)
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Keywords | 農業 / 倫理学 / 規範 / 弱い人間非中心主義 / 市場外部性 |
Research Abstract |
本課題は農業活動に関する倫理学的分析の有用性を明らかにすることを目的としており、このため本年度は研究計画に沿って、イ.農業活動分析に有効な倫理学理論の整理、ロ.農業生産、農産物流通販売活動の問題に対する倫理学的分析、ハ.農業生産、農産物流通販売活動の問題に対応した倫理学規範発見、考案について取り組んだ。 イ.については主に環境倫理学において研究の対象とされてきた共有地の悲劇、里山環境などの議論について、農業生産の現状から検討し、環境倫理学における「弱い人間非中心」的な視点と行動が農業における環境倫理問題対応への中心的な概念になりうることを提起した。また、これまでの環境倫理学における分析は規範による行動規定が前面に出やすくなっており、農業生産活動の現実との齟齬が生じやすいこと、環境倫理規範からみて農業活動においては望ましい側面と望ましくない側面があるが、前者の活動を担保する社会、経済的条件が損なわれつつあることなどを明らかにした。 ロ.とハ.については、一体的な分析を行い、農業生産、農業経営活動に関わる倫理的な問題について、法令違反等の問題ではなく、農業経営者が社会的なルール内で行う倫理的な選択の問題として、(1)経営目的、理念、あり方に関わる問題、(2)経営倫理と情報倫理、(3)生命倫理、(4)環境倫理の諸側面からから整理しつつ、これらの問題に共通する社会、経済的状況として、市場取引における経済性だけでなく、外部性における二面性(正の外部性、負の外部性)を認識しつつ、倫理学が提起するディレンマ、矛盾、葛藤などの発生を農業経営自らが捉え、問題の理解と把握に努めることが有用であることを明らかにした。
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