Research Abstract |
「研究の目的」 本研究では,子どもの身近な施設である学童保育において,虐待を発見した,または疑った学童保育指導員(以下、指導員)を対象に,どういった際に気づいたのか,その契機を明らかにした。また、指導員が認識する虐待徴候と、実際に虐待を発見した際の虐待徴候についても明らかにし、指導員を対象にした児童虐待の早期発見につながる研修を企画、実施することを目的とした。 「研究の実施計画」上記目的を達成するために、回収したデータの分析を行った。データの回収数は678件,回収率は47.6%であり,有効回答数は669件,有効回答率は98%であった。このうち,調査期間中に,子どもへの暴力に気づいた人は157人(23.3%),気づかなかった人501人(73.9%),無回答20人(2.9%)であった。その結果、虐待を発見した指導員の平均年齢は45.7±12.0(歳),平均経験年数は5.2±4.0(年)であり,平均勤務時間は4.3±1.4(時間)であった。子どもへの暴力を発見した人は保育士または教員免許を有する常勤者が7割近くを占め,既婚者で子どものいる人が9割近くであることが分かった。 この他,学童保育における虐待対応マニュアルの使用の有無について尋ねたところ,マニュアルがあると答えた人は僅か15人(9.9%)であり,134人(85.4%)の人はマニュアルがないと答え,8割強の施設で虐待対応マニュアルは利用されていないことが明らかになった。また,子どもへの暴力に関する研修会への参加実績のある指導員は4割弱であったが,多くの指導員が研修会への参加を希望していた。 子どもへの虐待と判断する要因としては,「性的行動問題」「身体的問題」「社会的行動問題」「養育上の問題」の4因子が抽出された。また、指導員が認識する子どもへの虐待徴候は「養育上の問題」「行動・表情の徴候」「他者との関わり方・性的逸脱行動の徴候」「発育・発達の徴候」の4つに分類された。さらに虐待発見の有無に関わらず養育上の問題である「養育者との関係が悪い」に関する項目は虐待徴候として最も高い値を示した。しかし、実際に発見した際の虐待徴候では子どもの不自然な「行動・表情の徴候」がほとんどであり、指導員が認識する虐待徴候と実際発見された虐待徴候にはズレのあることが示唆された。この他,指導員の属性である勤務形態,結婚の有無,子どもの有無,資格種類別,研修参加の有無,対応マニュアルの有無は,虐待発見の経験の有無と関連していた。そして、上記の調査結果を基にした非常勤で新人の指導員を対象に研修を企画し、5回実施した。しかし、非常勤の新人指導員の参加者は少なく、常勤の指導員が参加する傾向が強かった。
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