2010 Fiscal Year Annual Research Report
社会的不利条件下の女性と子供のヘルスリテラシー向上のための地域エフィカシー要件
Project/Area Number |
21659531
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
大西 真由美 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (60315687)
|
Keywords | 社会的不利条件 / 地域エフィカシー / HIV陽性女性 / 授乳 / エイズ孤児 |
Research Abstract |
ダルエスサラームにおけるPMTCT(HIV母子感染予防)クリニックに来所する母親へのインタビューおよび15歳未満のHIV感染クリニックに来所する子ども達へのインタビューにより、ヘルスリテラシーに関する調査を実施した。HIV陽性の授乳期にある母親らは、看護師らによる継続的カウンセリングや支援により、粉ミルクまたは牛乳やヤギ乳による育児を行なっていたが、一方で「授乳しない母親」に対する家族や地域住民からのプレッシャーを重荷に感じていた。WHO/UNAIDSは、2010年からガイドラインにより、生後6ヶ月までは、HIVステイタスに関らず完全母乳栄養を推進しているが、それまで母乳および人工乳についてインフォームドコンセントの上、母親が選択する方法を取っていたため、末端のクリニックや授乳期にある母親自身に浸透するまでには、しばらく時間を要すると推察された。HIV陽性の15歳未満の子ども達は、1ヶ月に1回の受診により、服薬モニタリングとカウンセリングを受けながら、健康状態の維持に努めているが、AIDS孤児も少なくなく、経済的理由により、必ずしも適切な栄養摂取ができているとはいえない状況であった。また、母子感染によりHIV陽性となった子ども達が思春期に達してきており、性行動やセクシュアリティに関するガイダンスが必要であるにもかかわらず、公的保健医療サービスの中では十分に対応できていない現状もある。授乳期にあるHIV陽性女性ならびに母子感染によるHIV陽性の子ども達に対して、医療的ケアのみならず、心理・社会的なケアも含めてそれぞれのステージに応じた包括的ケアが必要とされると共に、HIV/AIDSに関する地域社会での受容状況を踏まえた地域支援体制を検討する必要がある。
|