2011 Fiscal Year Annual Research Report
社会的不利条件下の女性と子供のヘルスリテラシー向上のための地域エフィカシー要件
Project/Area Number |
21659531
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
大西 真由美 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (60315687)
|
Keywords | 社会的不利条件 / 地域エフィカシー / HIV陽性女性 / 授乳 / エイズ孤児 |
Research Abstract |
キリマンジャロ州におけるPMTCT(HIV母子感染予防)クリニックに来初した母親へのインタビューおよび15歳未満のHIV陽性クリニックに来初する子どもたちへの質問紙を用いた構成的インタビューにより、ヘルスリテラシーに関する調査を実施した。 授乳中のHIV陽性女性へのインタビューにおいては、昨年度実施したダルエスサラムでのインタビューと同様に、粉ミルク、牛乳等による育児を行なっている者と、母乳による育児を行なっている者がいた。現在、WHO/UNICEFは「完全に安全な状態で粉ミルク等の代替栄養を与えられない場合には、生後6カ月までは、HIVステイタスに関わらず母乳栄養を勧める」ごとを推奨しているが、PMTCTクリニックの看護師等、カウンセリングにあたる保健医療従事者に対して、十分に最新の知識・情報が浸透している状況にはなかった。つまり、母乳栄養と代替栄養のメリットとデメリットを説明し、母親に授乳方法を選ばせるカウンセリングを行なっていた。必要に応じて、研究者による授乳カウンセリングに関する研修を実施した。 15歳未満のHIV陽性の子ども達に対するインタビューにおいては、月1回の服薬モニタリングとカウンセリングの他にも、クリニック受診時の待ち時間を利用して行なわれている心理カウンセラーによるプレイ・セラピー、孤児に対して教会で行なわれている「土曜日学校」など、医療的ケアのみならず、心理・社会的ケアも提供されており、限られた社会資源の中で子ども達のヘルスリテラシーを向上させるための機会提供について工夫されていた。しかしながら、世界的な経済不況の影響もあり、これまで里親制度や個人の基金や財団等によって孤児たちの生活を経済支援していた者たちが、支援の中断をしてしまうことにより、教育を受けられなくなってしまう子ども達のエピソードが散見された。また、何らかの形でこのような社会サポート体制とつながっている子ども達の他に、様々な偏見や物理的アクセスの問題から、恩恵を受けていない子ども達へのアウトリーチ活動の検討も必要だと考えられた。
|