2011 Fiscal Year Annual Research Report
日次マーケティングデータに基づく家計消費・労働供給の分析
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21673001
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
阿部 修人 一橋大学, 経済研究所, 教授 (30323893)
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Keywords | Homescan / 商品価格 / 物価 / 家計消費 / 購買行動 / 東日本大震災 |
Research Abstract |
2011年度は、2010年度に引き続き家計別物価指数の構築とその決定要因の分析を行なった。アメリカやイギリスの先行研究と同様に、日本においても家計間で物価水準やインフレ率に大きな差があることが確認されたが、その決定要因としては、アメリカの先行研究結果と異なり、年齢や所得による影響は統計的に有意ではあるものの、決してその程度は大きなものではなく、むしろ、家計が特売を利用するか否かにより大きく左右されるという結果を得た。この結果はイギリスの先行研究とほぼ同様の結果となっている。家計別物価水準の分析結果はAbe and Shiotani(2012)として、また家計別インフレーションに関する分析結果は阿部・塩谷(2011)にまとめてある。また、2011年3月11日に発生した東日本大震災直後、主に東日本で生じたモノ不足に関してインテージ社との協力のもと研究グループを組織し分析を行なった。震災直後、首都圏においてトイレットペーパーや米、インスタントヌードル、水等多くの財が品不足となったが、商品価格の上昇は限定的であり、結果として超過需要が発生し、多くの家計にとり商品の購入が困難な事態となった。本研究グループは、震災直後のHomescanデータを用い、震災直後の物価の動きとモノ不足の程度を定量化し、家計属性により商品の入手しやすさが大きく異なっていたことを示した。これらの分析結果は、2012年3月に開催した国際コンファレンス"Consumption and Prices:Investigation of Homescan Data"において、報告された。なお、この国際コンファレンスには、欧米よりHomescanを用いた分析を行なっている多くの研究者が参加し、世界的にもユニークなHomescanに特化したコンファレンスとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題申請時、本研究課題で明らかにすべき点として、(1)消費平滑化の期間と強度の推計、(2)家計別物価指数の作成およびその性質の分析、(3)家計購買行動と労働供給・所得分布に関する分析、の三点を挙げたが、そのいずれに対しても、この三年間で明確な結果を導くことが出来た。マーケティングデータの利用や研究チームの構築も順調であった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き家計消費・物価の分析を行うが、特に、東日本大震災後の家計消費行動と物価変動を重視する。また、震災直後に観察された買いだめ行動を描写するための家庭内在庫モデルの分析も進める。
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Research Products
(12 results)