2012 Fiscal Year Annual Research Report
日次マーケティングデータに基づく家計消費・労働供給の分析
Project/Area Number |
21673001
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
阿部 修人 一橋大学, 経済研究所, 教授 (30323893)
|
Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
|
Keywords | Homescan / 商品価格 / 物価 / 家計消費 / 購買行動 / 東日本大震 |
Research Abstract |
平成24年度は、平成23年度に引き続き、スキャナーデータに基づく家計物価指数の構築とその決定要因の分析、震災後の首都圏における価格変化の分析を行った。震災直後の首都圏では、続く余震のみではなく、計画停電が地域によっては実施され、家計や店舗の経済活動に大きな影響を与えていた。そこで、平成24年度は、店舗の立地情報を用い、計画停電予定地域及び実施地域と、予定されなかった地域、予定はされていたが実施されなかった地域に分け、商品の売り上げと価格の動向に差があるか否かを検証した。同時に、特売動向や商品入れ変えの実績を分析するため、各商品の容量情報に基づいた単価の計算も行っている。この研究はインドで行われたEconometric Society等、各地の学会やセミナーで報告し、平成24年度末の段階でほぼ完成している。 さらに、商品価格動学の理論として、家計の選好パラメターに異質性があり、価格弾力性の異なる家計のサーチと店舗の利潤最適化を組み合わせたモデルビルディングも、研究協力者と進めている。 また、スキャナーデータではカバーされない他の支出や労働供給に関する補足のため、総務省による全国消費実態調査、及び家計調査の個票データ、さらに厚生労働省による21世紀成年者縦断調査の個票データを申請し、それらを用いた家計の消費・労働の分析を開始した。特に21世紀成年者縦断調査は家計消費に関するデータが含まれた、若年層を対象とした世界でも類のない大規模なパネル調査であり、従来の調査やスキャナーデータでは困難であった就業形態の変化と消費・所得の変化を追跡することが可能となる。これらの個票データを駆使し、パネルデータの特徴を再現する動学モデルの構築を行っている。この研究は平成25年度の学会及び各種コンファレンスで報告予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題申請時、本研究課題で明らかにすべき点として、(1)消費平滑化の期間と強度の推計、(2)家計別物価指数の作成およびその性質の分析、(3)家計購買行動と労働供給・所得分布に関する分析、の三点を挙げたが、そのいずれに関しても、この四年間で明確な結果を導くことが出来た。マーケティングデータの利用や研究チームの構築も順調であった。また、これらに加え、震災時の商品価格・購買行動の分析が進行している。さらに、マーケティングデータに加え、全国消費実態調査や21世紀成年者縦断調査等の個票データを駆使した研究も進行中であり、順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
プロジェクトの最終年である平成25年度においては、平成24年度までの研究成果に基き、特に下記の3点の分析を重点的に行う。 (1) 近年の若年雇用の動態と家計消費の関係に関する実証分析ホームスキャンデータの情報を補足するため、21世紀成年者縦断調査、全国消費実態調査・家計調査の個票データを用い、消費・所得・労働時間・正規・非正規等、様々な情報を不確実性下の動学モデルに取り込み、シミュレーションとデータをマッチングすることで、近年の若年層における消費・貯蓄決定メカニズムを分析する。また、若年層と老年層、男性と女性等、異質な主体で構成されている家計内の意思決定メカニズムを解明するため、女性や若年層の就業状態・所得と家計消費パターンの関係を分析する。 (2) ホームスキャンデータを用いた家計別物価指数の精緻化と家庭内在庫モデルの構築及びその推計特売時や停電時における買いだめ行動を用い、保存可能な財に対する需要の動学構造を分析する。合わせて、家計間物価水準の格差の決定要因を分析する。特に、特売において頻繁に購入する家計と、定価での購入を厭わない家計等、家計間で行動の差が顕著に生じる要因を分析し、消費税改定等の政策変更の際、家計間でどの程度帰着の差が生じるかを分析する。 (3) 東日本大震災後の商品価格、物価と特売動向の変遷 震災直後、特に首都圏において観察された物不足、買いだめ行動と個別商品価格の推移を分析し、大規模なショックが生じた時の市場の機能とその問題を分析する。特に、超過需要に対し、個別商品価格の調整は主に特売頻度の変化によってもたらされたとする先行研究の結果をPOSデータを用いて定量的に検証し、インフレ・デフレのメカニズムの解明を目指す。
|
Research Products
(3 results)