2013 Fiscal Year Annual Research Report
厳密なカイラル対称性をもつ格子理論による量子色力学のトポロジカルな真空構造の解明
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21674002
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
橋本 省二 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (90280510)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | 格子ゲージ理論 / カイラル対称性 / トポロジー / 量子色力学 |
Research Abstract |
量子色力学はクォークのダイナミクスを支配する基本法則である。非常に強い非線形性をもつために、理論を解いてその固有状態、特に碁底状態(=真空)、を求めることは非常に難しい問題であり、数値計算による他ない。真空ではクォークのもっカイラル対称性が自発的に破れて核子に質量を与える源になっていると考えられているが、その様子を微視的に明らかにするのにも格子ゲージ理論による数値シミュレーションが不可欠である。本研究は、格子ゲージ理論のなかでも格子上でカイラル対称性を保つ理論定式化を用いて量子色力学の大規模シミュレーションを実現するもので、これにより真空におけるカイラル対称性の自発的破れを定性的および定量的に明らかにすることを目指している。これまでの実績報告でも報告した通り、平成24年度までの研究によってすでにこの目的は果たしつつある。平成25年度は(真空中ではなく)核子中のカイラル対称性の破れの解析を進めた。核子中ではクォークのもつカラー荷電のために対称性が部分的に回復すると考えられているが、数値計算によってこの兆候をとらえることが可能になりつつある。 さらに平成25年度においては、研究計画の最終段階として、これまでの研究をさらに発展させるための格子計算の手法の改良の研究を進めた。厳密なカイラル対称性をもつ格子理論のもつ最大の問題点は、必要な数値計算のコストが非常に大きい点にある。さらに大規模で現実に近いシミュレーションを実行する上では、このことが大きな障害になる。このため、わずかなカイラル対称性の破れを許して大幅な高速化を可能にする格子定式化を開発すべく研究を進め、実際に実現できることがわかった。これを用いた大規模シミュレーションの準備を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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Research Products
(4 results)