2010 Fiscal Year Annual Research Report
中国のエネルギー・環境問題の構造的要因とその解消に向けた政策研究
Project/Area Number |
21681005
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堀井 伸浩 九州大学, 大学院・経済学研究院, 准教授 (10450503)
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Keywords | 中国 / エネルギー / 環境 / 産業経済論 / 産業組織論 / 市場経済移行 / 石炭 / 再生可能エネルギー |
Research Abstract |
本研究の研究目的は中国で進む市場経済化という制度変化によって変容する中国のエネルギー・環境産業の構造を把握し、それを踏まえて政策提言を行うというものである。平成22年度は、特に風力発電産業について、新たな調査活動(フィールドワーク)を行い、現地研究者(清華大学教授)に調査委託を行った。風力発電産業、そして初年度以来継続の排煙脱硫装置に関する研究から中国の省エネルギー・環境対策の改善は対策技術の中国企業による国産化がもたらしたコストダウンが決定的に重要であったこと、中国企業が技術の担い手として台頭したのは市場経済化による企業のインセンティブ向上が重要な役割を果たしたことを明らかにした。同時に海外からの技術移転においては、中国政府の外資政策が中国企業に有利な環境を作り出した点も軽視できず、この点で日本企業はこれまでの対中ビジネスモデルを再考する必要があるとの示唆を得るに至った。以上の新たな調査に加え、伝統エネルギーに関しては、中国現地研究者(山西省社会科学院能源経済研究所)を招聘し、最新動向に関する情報収集と当方の研究成果に関するコメントを受ける目的でワークショップを開催した。 具体的な研究成果は、雑誌論文2件、学会発表7件、図書2件で、雑誌論文と図書の数は平成21年度より減少したが、研究活動の主軸を新規の調査活動に置いたためである。しかし『中国経済』(日本貿易振興機構)に寄稿した排煙脱硫装置に関する論文はこれまでの調査をとりまとめた本格的かつ独創性の高い成果と自己評価している。学会発表は増加し、調査中の風力発電産業について現段階の知見を報告し、有用なコメントを得る目的で行ったものと、平成21年度に進めたセメント産業に関する研究の成果発信の目的で行ったものに分けられる。台湾でのセメント産業に関する報告を基に中国語での論文を東京大学社会科学研究所のシリーズに収録するという成果もあった。
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