2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21685015
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松下 未知雄 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 准教授 (80295477)
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Keywords | 分子磁性 / 有機ラジカル / 有機導体 / 磁気抵抗 / プリンタブルエレクトロニクス / 有機薄膜トランジスタ |
Research Abstract |
印刷のような低エネルギー・低コストなプロセスを利用した磁気抵抗素子の作成を目指し、導電性を有する有機ラジカル分子の開発を進めた。特に、ラジカル分子の中性結晶にも関わらず高い導電性を示し、巨大磁気抵抗の発現が確認されているTTF系スピン分極ドナーBTBNについて、結晶構造解析を進めるとともに、各種分光法によって、その電子構造を明らかにする研究を行った。結晶構造解析の結果、BTBN分子は中性結晶でありながらπ共役系が密に積層し、導電性発現の上で有利な構造であることが明らかになった。この際、中赤外領域に至る電荷移動吸収帯が観察され、偏光吸収スペクトルの測定から、この吸収が分子積層方向の相互作用に基づく事が示唆された。バンド計算及び光電子スペクトルの結果からもラジカル骨格部分がアクセプターとなり、πドナー部が形成するバンドから電荷を受け入れる事が示された。この結晶における巨大磁気抵抗の発現温度は30K以下であるが、単一成分で、かつ溶液の塗布により得られる微結晶薄膜の状態で巨大磁気抵抗を発現するため、ある意味で目標を実現しているといえ、発現温度の向上により室温で動作する事が出来れば、十分に実用に供する事が可能と考えられる。そこで、磁気抵抗の発現温度を高める上で、BTBNについて得られた知見をもとに、BTBNをリード化合物としてラジカル部とπ共役部の相互作用を増大させる分子設計を模索した。分子軌道計算の結果、数種類の分子についてはBTBNを上回る相互作用が予想され、そのうちの一部について合成に着手している。
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