2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21685015
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松下 未知雄 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (80295477)
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Keywords | 分子磁性 / 有機ラジカル / 有機導体 / 磁気抵抗 / プリンタブルエレクトロニクス / 有機薄膜トランジスタ |
Research Abstract |
印刷のような低エネルギー・低コストなプロセスを利用した磁気抵抗素子の作成を目指し、導電性を有する有機ラジカル分子の開発を進めた。すでに、TTF系スピン分極ドナーBTBNが、ラジカル分子の中性結晶にも関わらず高い導電性を示し、30K以下の低温ではあるものの、単一成分で、かつ溶液の塗布により得られる微結晶薄膜の状態で巨大磁気抵抗を発現することを見出しているため、その分子設計のコンセプトをもとに、磁気抵抗の発現温度を高めるための新規分子の開発を進めた。BTBNをリード化合物として、π共役系の硫黄原子をセレン原子に置換することで分子間相互作用を増大させる分子設計を行った分子に関しては、実際に伝導度が上昇し、BTBNと同様に中性結晶の状態で巨大磁気抵抗が観察された。しかしながらその際、磁気抵抗比は増大したものの、磁気抵抗の発現温度には低下がみられた。このことは、電気伝導を担う電子が分子間で非局在化することで、より多くの分子のラジカル部と相互作用できるようになり、磁場への応答性が高まる一方、ラジカル部との空間的重なりが低下することで発現温度が低下したと解釈できる。一方、BTBNと類似の骨格では、これ以上の発現温度の上昇は見込めないことが、この結果から明らかになった。電界効果トランジスターの素子構造を利用した電荷注入を前提とすれば、TTF等の高いドナー性を持つ分子骨格は必ずしも必要ではないため、より抜本的にラジカル部とπ共役部の相互作用を増大させる新たな分子設計を行い、合成に着手した。分子軌道計算の結果からはBTBNの数倍の相互作用が見込まれている。
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