2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規抗インフルエンザ薬開発に向けた構造生物学的研究
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21689014
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
尾林 栄治 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 特任助教 (50321740)
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Keywords | インフルエンザ / RNAポリメラーゼ / 立体構造解析 |
Research Abstract |
2009年に発生した豚由来新型インフルエンザによる世界的大流行は、一時的に世界中を混乱に陥れたものの、その毒性は季節性の亜型と同じで弱く、死者数は予想されたものよりもずいぶん少なかった。しかし、今後鳥インフルエンザのような強毒型による世界的大流行が起こりうると懸念されており、その対策は世界中の国々にとって非常に深刻な問題である。本研究ではその対策の一つとして、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼ(vRNAP)をターゲットとした新規抗インフルエンザ薬開発を目指し、その構造生物学的研究を進め、これまでにvRNAPを構成する三つのサブユニット間のそれぞれの結合部位の立体構造を解明してきた。平成22年度には、完全な形でのvRNAPの立体構造解析を目指し、三つのサブユニットのタンパク質発現系構築を試みた。その結果、酵母を用いた発現系により、PAサブユニット全長の発現に成功したが、PB1及びPB2全長の発現は、大腸菌・酵母どちらを用いた場合にも確認できなかった。そこで、これまでの本研究により既にその発現に成功しているPA-PB1サブユニット複合体を用いて、新規抗インフルエンザ薬開発を目指した。まず始めに、複合体の立体構造を基にin silicoによるサブユニット間結合阻害剤を探索し、導き出された化合物と複合体の結合を生化学的に解析した。その結果、数種類の結合阻害剤が見つかった。また、PA-PB1複合体に結合するモノクローナル抗体を調製したところ、ウイルス複製を抑制する抗体の調製に成功した。これらは新薬開発に向けて非常に重要な成果であり、特許申請も視野に入れさらなる研究を進めている。今後は、これら候補化合物及び抗体との結合型の立体構造解析を行い、抗インフルエンザ薬開発に向けたさらなる情報を引き出していく。
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