2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21700289
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒島 妃香 Kyoto University, 文学研究科, 研究員 (10536593)
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Keywords | 自己理解 / 他者理解 / 意図理解 / 社会的知性 |
Research Abstract |
本年度、申請者はフサオマキザル(新世界ザル)とアカゲザル(旧世界ザル)を対象とし、他者(ヒト演技者)の動作の認識が、自身の経験の有無によってどのような影響を受けるのかを検討するための実験を行った。ヒト演技者とサルとの対面実験場面において、演技者は、瓶のブタをあけて中の報酬(餌)を取り出し、サルに渡す試行を繰り返した(レギュラー試行)。途中、テスト試行として、ブタが開けられない動作(「結果を知っている動作」条件)と、フタを開ける目的には適さない動作(「新規動作」)を30秒間見せ、各条件におけるサルの演技者への注視時間を測定した。サルは「結果を知っている動作」を演技者が行っている時の方が、「新規動作」を行っている時よりも有意に長く注視した。つまり、2つの動作の違いを検出できるのであれば、注視時間の差として示されることがわかった(実験1)。次に、新規な餌箱を導入し、サルに箱を開けるための2種類の新規動作を見せた。2種類の動作に対するサルの注視時間には有意な差は見られなかった(実験2)。そこで、2種類の新規動作のうち1種類をサルに訓練した後、実験2と同じ手続きでテストを行った(実験3)。その結果、サルは自身が獲得した動作を演技者が行っている時の方を、知らない動作を行っている時よりも有意に長く見た。この結果は、自身の動作経験により、他者の動作の認識(解釈)が異なることを示唆している。この結果は、ヒト幼児で行われた実験結果を支持するものである(Sommerville, et al.2005, Meltzoff & Brooks, 2008)。他者の意図理解のメカニズムにおいて、ヒト同様、サルも自己経験・自己理解が、他者理解の基盤になっている可能性がある。この研究については、現在投稿準備中である。
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