2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21700289
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒島 妃香 京都大学, 文学研究科, 研究員 (10536593)
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Keywords | 自己理解 / 他者理解 / 意図理解 / 社会的知性 |
Research Abstract |
本年度、申請者はフサオマキザル(新世界ザル)を対象とし、自己の内的状態の認識と他者の内的状態との推測の関連について、自己の経験が他者の行動の解釈に影響を及ぼすのか、さらにどのような影響を及ぼすのかを調べる実験を行った。手続きは以下の通り。餌(ご褒美)の入った透明な引き出しがある。引き出しには複数の開け方がある。被験体を3群に分けそれぞれの群に、1)コンテナの側面にあるタブを押すことで引き出しを開ける方法、2)引き出しの正面についているロープを引くことで引き出しを開ける方法、3)開ける動作は全く行わず、開いた状態(最終状態)から餌だけを取らせることを訓練する。その後、実験者(他者)が引き出しを開けようとする複数の動作を見せる。実験者の動作は以下の通り。1)タブを押そうとする、2)ロープを引こうとする、3)引き出しの側面を直接引き出そうと指でつつく(どのグループもこの動作の経験は行っていないが、動作の意味は同じ)、4)引き出しの逆側の側面を指でつつく(開けるための動作ではない)。実験者がそれぞれの動作をおこなっている間の被験体の注視時間を比較することにより、先に行った動作経験が他者の動作の認識にどのような影響を及ぼすかを調べた。その結果、自身が訓練された動作と動作自体は異なるが意味的には同じ動作を行う訓練者を長く注視した個体はいなかった。この結果は、サルが動作レベルで他者の動作を認識していることを示唆している。今後、詳細な結果の分析と、さらなる研究を加え、結果の考察をする。また、自己の動作と他者の動作の同調が及ぼす影響を調べるため、サルとヒトとの間でトークンと餌(ご褒美)の交換行動の訓練を開始した。現在、観察学習から実験者とのトークン交換行動を学習できたサルは6個体中1個体だった。今後、すべてのサルに対し積極的な訓練を行い、本実験へと移行する。
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